force <S> ページ37
◆SIDE-S◆
この世はクソったれだ。
「普通」から少し外れるだけで
何とも形容し難い目を向けられる。
親に感謝してるのは
頭の中身も見た目も
標準以上に産んでくれた事だけ。
それ以上でも
それ以下でもない。
ただ、それだけ。
顔も覚えてねぇし。
俺の中で一番古い記憶は
親らしきヒトが
この施設に俺を置いて消えた。
去っていく、その後ろ姿だけ。
一度も振り返らず、
俺に声を掛ける事もせず、
ここのオトナ達に引き渡して。
俺の前から、消えたんだっけ。
これでもさ。
ガキの頃は、
素直でイイコだったワケ。
置いて行かれた理由も、
どうしてココにいるのかも、
全然分かんねぇから泣いたりして。
周りは知らないオトナばっかで、
遠巻きにしか関わってこねぇ。
近寄ってくるのは、
自分と歳が近いようなガキばっか。
周りのヤツの方が
俺よりもっとピーピー泣いてっし。
一緒に泣くより、冷めるよね。
泣いたところで、
もう、どうしようもないって、
なんとなく分かったし。
どれだけ泣いたところで
誰も迎えになんて来やしねぇ。
そん時だよね。
初めて『憎しみ』ってヤツを知って。
それがチカラの元になるって
なんとなく感じたんだっけ…。
「ここ」がどういう所か
「ここ」で何をするのか
「ここ」でどう生きるか
親にすら持て余された俺が、ここのオトナ達に教えられた事は、正直すぐに受け入れられるようなモンじゃなかったけど。
それでも、教えられた事をするしか、その時の俺には選択肢が無かったし。
チカラをコントロールする術を
チカラを使う時の自分の状態を
記録して
観察され
実験され
他の奴らより数段強くなったチカラ。
それを抑える為に選んだのは
シルバーのピアス。
シルバーとは相性が良い。
他の金属よりも、俺の理性を引き戻してくれやすい。
チカラが強くなって
ピアスを付けてから
俺は
ガキ共の練習相手をする事が増えた。
そん時は既に、俺を越えるチカラを持ったヤツなんて、ここには居なかったからな。
そん時に気付いたよね。
あぁ、
このチカラは。
『普通じゃない』んだってね。
ホント、
この世はクソったれだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 71人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
