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【乗客Aの災難】
｢(うわでっか…)｣
大学生である私は2限の第2言語の授業に出席するべくいつものように電車に乗っていた。私の大学は商業施設や水族館のある駅の先にあるため、その駅を過ぎるまでこの電車はいつもそこそこ混む。
今日もいつものようにそれなりに人に揉みくちゃにされながら吊革を掴んでいると、明らかに周りの人より頭1つ…いや2つくらい抜きん出た男が乗り込んできた。
いやでっか…180以上は確実にある。大学生かな。身長と体格の良さも相まって、その大人びた顔や切れ長の目は車内の誰よりも圧を放っていた。と、何やら話している様子。
その高身長に圧倒されて気づかなかったが、横に女性が立っていた。彼女なのか、連れらしいその人と親しげに話している。
ど…どえれえ美人だ…モデルかなんかか…？その男性と並んでいると分かりにくいが、彼女も身長が高くてスタイルが良い。股下2mじゃん…とオタク特有の誇張表現を胸に秘めつつ、あんまり見すぎても悪いのでそっと目線を外す。と、その会話がつい耳に入ってきた
｢鉄朗、その服買ったの？｣
｢え、あ、まあ…｣
｢ふーん｣
｢…なんすか｣
｢今日のために買ったんだ〜｣
｢……………別に今日のためだけじゃないですけど｣
｢はいはい、似合ってるよ｣
あっそういう感じ！？！？？オタク特有のﾆﾁｬ笑いを封印すべく、唇を噛み締める。
君年下なんだね！？彼女さんに結構手のひらで転がされてる感じ！？そのなんかすごい女を手玉に取ってそうな見た目で！？ッカ〜〜〜〜〜〜オタクそういうの大好きすいませんキモくて。
耐えられずちらりと横目で様子を伺うと、鉄朗と呼ばれた彼は悔しいような嬉しいような複雑な表情で唇を噛んでいた。あ〜〜〜〜そうだよね！！！デートのために買ったのバレちゃって恥ずかしいけど似合うって言われて嬉しいんだよね！！！！
ほんのりと頬を染める彼からはもはや圧など感じられず、微笑ましい気持ち(とオタク心)からついちらちらと凝視してしまう。
と、水族館のある駅に着くと彼らも人波と一緒に降りていく。デートは水族館か…いいものを見せてもらってしまった、どうぞお幸せに…と祈っていると、不意に彼女の目だけが私を捉えた。
｢駄目だよ｣
唇は動いていないのに、そう言われた気がした。長いまつ毛に縁取られた黒真珠が一瞬きするうちに彼女たちは見えなくなったが、その一瞬は永遠に感じた。
(…………いや取らねーよ！！！)
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さき(プロフ) - めちゃくちゃおもしろいです！！このお話だいすきです！これからも応援してます‼︎ (4月11日 22時) (
レス) @page15 id: 017d61e151 (このIDを非表示/違反報告)
yuuu(プロフ) - すごくすごくおもしろいです！黒尾さん、大好き！ここのクロかっこかわいいです (3月19日 6時) (レス) @page14 id: 6410d877bf (このIDを非表示/違反報告)
麗(プロフ) - 暁☆さん» コメントに加えて前作、本作を読んでいただきありがとうございます。更新が遅くなってしまい申し訳ないです。暁☆様にも楽しんでいただけましたら嬉しいです！ (3月15日 8時) (レス) id: 61b67fe907 (このIDを非表示/違反報告)
暁☆(プロフ) - 続編おめでとうございます！久しぶりだったので最初から読み直したのですが、やっぱり好き〜！を噛み締めてしまいました…！続きを読めるのが本当に嬉しいです✨お身体気をつけて、作者様のペースで頑張ってください！これからも応援しています😊 (3月14日 20時) (レス) id: f3c28010ce (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：麗 | 作成日時：2024年3月14日 11時
