4、理由 ページ4
言っておくけど私がこんな可愛げもない真顔でいるのは全部君たちが原因だからな。
なんて言えるはずもないことを心の中で叫ぶ。
神代類、草薙寧々はもちろん推し。
ワンダショは箱推し。
いつ見ても昇天しかけるくらい眩しい顔にいちいち反応してたら気持ち悪いだろうからポーカーフェイスを死ぬ気で取得した結果がこれなのだ。
むしろ今の雰囲気にはピッタリ過ぎるから自分を褒めたい。
類はショーを否定され続け、ストーリー通りにやさぐれた。
制服を着崩して髪を纏めた「中学生の神代類」だ。
寧々もストーリー通りに初公演で大失敗。
昔からは想像出来ないほど塞ぐようになった「草薙寧々」だ。
『ポテチ食べていい？』
「好きにして」
『ありがとう』
そんな二人の顔と雰囲気は本当に暗い。
正直言って毎日楽しく学校生活を謳歌してる私が何故か申し訳なくなるくらい、暗い。
でもそんなこと毛ほども気にならない。
なぜなら推し二人と同じ空間にいる、ということ自体が異常事態すぎるから。
時間が経てば慣れる？
バカ言うな、むしろ時が経つにつれ鼻血が出る頻度が増えたからな。
おかげでポーカーフェイスなら誰にも負けないくらい上手くなった。
現に寧々と類にもバレてない。
「……類」
「うん？」
「…その、学校は大丈夫なの？」
「……まあ悪くはないよ。最近僕のような仲間が一人増えてね、話し相手には困ってないかな」
「そう…」
直感でその仲間が暁山瑞希であることを悟った。
もうそこまでストーリーが進んでいる。
あと数年したら、二人は救われる。
ストーリーが大事とは言え、好きな人が笑ってないで辛い顔をしているのは好きじゃない。
早く、早く天馬司に出会え。
「そういう玲は？学校は楽しいのかい？」
『…っえ。学校？』
空に思いっきり念じてたから、一瞬反応が遅れた。
申し訳ないと思いながらも目線を合わせて喋れるはずもなく、彷徨った視線は持ってるポテチに合わせられる。
『まあ楽しい。みんなと喋れて勉強できて楽しいよ』
「フフ、それは楽しそうだね」
「私、玲と一緒の学校だったら良かったのに」
「おや。転校を考えてるのかい？」
「……たまにちゃんと考える」
ゲームをしながら器用に返事をする寧々にまた顔がニヤケそうになるのを根性で捻じ伏せた。
『そろそろ帰る』
「ん、バイバイ」
「じゃあ僕も帰ろうかな。バイバイ寧々」
「さっさと帰って」
続く
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作者名：第二の羊羹 | 作成日時：2024年3月28日 11時
