「底辺」３...Mai side. ページ47
噂でしか聞いた事のない存在が、目の前に居る。
その相手は、噂から想像された姿とは異なるどころか……まったく呪術師らしくない存在だった。
「初めまして神城さん。あなたの事は噂でしか知らなくて……去年の姉妹校交流会で特級過呪怨霊を手中に収めたとか、12月24日に百鬼夜行の元凶を退けたとか……“一度死んだ”とか」
「！！ 真依、てめぇ……ッ」
「私、実際に死んだ経験なんてした事無いから、教えてくれる？ 死んだ時どんな気持ち……、ッ!!」
ふと目線を動かした時、私と彼女の色が違う目と目が、合った。
彼女の眼が宿しているのは鮮やかな金色だというのに、その眼には……恐ろしいほど一切の光が見えなかった。
色のある闇……心理がまったく読めないその目から、視線を逸らす事が出来なくなる。
『…………』
ただ、目を合わせているだけだというのに、次第に呼吸が浅くなり、ついには息が出来なくなった。
まるで水中に溺れているような感覚に冷や汗が止まらない、込み上げてきた涙に視界が歪む……。
「(これ以上は本気でマズイ……)あーやめやめ、底辺同士でみっともねぇ。おい詠子、何ボケ〜っとしてんだ、恵拾いに棘とパンダんとこ行くぞ!!」
『！…………うん』
「カハッ……はッ、はぁ……ケホッ」
一瞬にして解放された瞬間、肺へと一気に入り込んだ空気に軽く噎せる。
…………今、一体、私は何をされた？
「野薔薇!! 立てるか!?」
「無理よ、しばらく起きないわ。それなりに痛めつけたもの」
私がそう伝えると、真希は私の目前へと鍛練棒を突きつける。
「何？ やる気？」
真希の視線は……私の背後にあった。
気付いた時にはワンテンポ遅れたせいで、私の身体は背後から羽交い絞めにされ、そのまま地に倒されてしまった。
「ナイスサポート真希さん。おろしたてのジャージにばかすか穴空けやがって。テメェのその制服置いてけよ、私の夏服にしてやる」
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作者名：神屋之槭樹 | 作成日時：2023年4月16日 18時
