「呪胎戴天」４ ページ32
特級は、縦方向に幾重にも切り刻まれた姿で……生きていた。
先程の異質な空間は消え、同時に歪んでいた領域も消えている。
【そうそう。それから、これは貰っていくぞ】
そう言って、両面宿儺が特級の体内から取り出したのは……特級呪物の指。
呪物を抜き取ると、切り刻まれた特級は完全に消滅していった。
指を手に、両面宿儺は私の方へと歩み寄ると、クツクツと静かに喉で嗤う。
【さて、小娘……俺は目を瞑ろう。だが、次は必ず｢黄泉｣を叩き起こしてやる。覚悟しておけ】
『…………』
……結局、私は無力だった。
しかし、“本人”から聞いてしまった記録の相違は、あまりにもズレが大きすぎて……思い返すだけでも背中が逆撫でされる感覚に襲われる。
それが事実であっても、虚構であっても……“私”は結局、
【終わったぞ!! 不愉快だ!! 代わるのならさっさと代われ!!】
奴が声を張り上げる。
内に居る虎杖くんへと向けられた言葉……しかし、その肉体に変化は見られない。
【…小僧？】
反応のない虎杖くんを不思議に感じた両面宿儺が眉根を寄せる。
…………ゾクリ。
目の前に迫った、顔。
四つの眼光が、私の目の奥を覗き込んでいる。
『！！』
【小娘、さっき俺は目を瞑った……つまり、今が“次”だ。さて……｢黄泉｣を叩き起こしてもらうぞ】
『ッんッぐ……ッ!?』
油断した、完全に油断をしていた……。
身を引こうとした時には既に手遅れで、両面宿儺に後頭部を固定された私は、そのまま唇を奪われる。
舌先が強引に私の唇を割り、隙間から流し込まれる奴の呪力が、私の呪力を覆っていく……。
遠退いていく意識の向こうで、佇んでいるのは、誰……？
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作者名：神屋之槭樹 | 作成日時：2023年4月16日 18時
