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確認したい事 ページ9

「…………来る」
『!』

呪い特有の耳障りな声が、“帳”の中に満ち広がった。
校舎を這っていた呪いの中から姿を現したのは……教室で見た里香ちゃんの、その全容。
里香ちゃんは顕現すると、目の前の呪いを引き千切り、染まる手を掲げてニタァ…と笑った。

「凄まじいね。これが特級過呪怨霊、祈本里香の全容か。女は怖いねぇ」
『…………』
「それで……詠子の“確認したい事”っていうのは?」
『これから、確認しに行ってきます』

先生に一言告げてから、私はひとりで“帳”の内側へと足を踏み入れる。
“帳”の内側に入って最初に目にしたのは……負傷した真希ちゃんを背負い、重症化している二人の子供を抱えて、“帳”の外へとまっすぐに足を動かしている乙骨憂太の姿。
一息吐いた彼が顔を上げた時、視線が合った。

『乙骨くん、お疲れ様』
「! あッ、えっと……神城、さん」
『“帳”の外で、先生が待ってる。……あとは、任せて』
「任せてって、一体何を……ッ!?」

彼が振り向く前に、私は左手に持っていた手鏡を通して校舎の屋上へと瞬間的に移動した。
これも私の“術式”で、鏡のように反射するモノを通して転移する事ができる優れモノ……“勝負”の時によく乱発して逃げ回ったっけ、一番使い慣れてるかもしれない。

『それ、とっても綺麗な色だね』
【おまえ…だぁれ?】

転移した屋上には、グチャグチャと粘着質な音を響かせながら“赤色”を掻き集めている、同じ色に染まった里香ちゃんが居て……。

『詠子だよ。私の名前、神城詠子っていうの。あなたのお名前は?』
【詠子 ? 詠子 …りかはァ りか だよォお”ぉ】
『そっか。“里香ちゃん”って言うんだ、よろしくね。早速なんだけど……私と、仲良くしてくれる?』

そう言って、私は里香ちゃんに握手の意味合いで手を差し出した。
完全なる博打……だけど、不思議と私の中に“恐怖心”は存在していない。

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作者名:神屋之槭樹 | 作成日時:2023年2月20日 0時

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