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話せば分かる ページ25

「詠子連れてきたよ〜」

学校からいきなり連れ出され、知らない人間達の前にほっぽり出されて……私の思考は、固まった。
夜蛾学長と五条先生以外、全く誰か分からない。
だけど、学長や先生のように自分よりもはるかに上の人間が多い事だけは、何とか理解ができた。
それならば……私はそっと一礼をして、一呼吸を置いてから口を開く。

『状況の理解に少々お時間をいただいておりました、ご挨拶もせずに不愛想を申し訳ございません。神城詠子と申します』

お相手様の反応を見る限り、この選択に間違いはないはず。
何がどうなっているのか……ザクザクと刺すような視線と雰囲気に、“面倒臭い”がたくさん見えた。

「ちょ、ちょっと五条!! こんな状況になってるのに女の子連れてくるって何考えてんの!?」
「大丈夫だって〜。なんてったって詠子は“唯一無二”なんだから!」
『先生、私がここへと連れて来られた理由を、まだお伺いしておりません』
「あれ、そうだっけ?……ま、ザックリ言うと、里香が出てきそうになってるんだ。ほら詠子、前回の完全顕現の時に里香と接触できてたじゃん? ワンチャン止められるんじゃないかなーって思って」
『……かしこまりました。それでは行って参ります』
「は!? ちょっと、あなた!!」

顔に痕が見える女性が何か声を上げたけど、私は未だ轟音を発している音源へと一目散に向かった。
東京校の校舎に似た建造物は大きく破壊されており、その中心に血を流した乙骨くんと……そんな彼を守るように腕だけを伸ばしている里香ちゃんを見つけた。

『乙骨くん、生きてる?』
「神城さん!? え、どうしてッ……駄目だよ里香ちゃん!!」

里香ちゃんの腕が、鋭い爪が、まっすぐこちらへと伸ばされてきた……乙骨くんが彼女に制止を叫ぶ。

【ア”あ”ぁ詠子!! 憂太がッ憂太がぁア”あ”ぁ!!】
『里香ちゃん、大丈夫だよ。全部終わったから、誰も乙骨くんを虐めないし、傷付けない』
【あ”ぁアぅ”う”ぅ……ほんとお”ぉに?】
『うん、本当だよ。だから、大丈夫』

私の身体を包むように掴んだ里香ちゃんの指を優しく撫でながら、私は里香ちゃんに“安全”を伝えた。
対話による接触は実質3度目だけど、どうやら私は特級過呪怨霊の里香ちゃんに“一個人”として認識されていた様子……。
しばらく話をして里香ちゃんが引っこんだ後、乙骨くんと一緒に戻っていったら何故か京都校側にめっちゃ驚かれた。

ハジメマシテの先輩に頭を撫でられたのは何でだろう。

“乙骨憂太”という存在→←学校行事の非常事態



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作者名:神屋之槭樹 | 作成日時:2023年2月20日 0時

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