少女の中に潜む影...No side. ページ22
「詠子は?」
「今はぐっすり眠ってるよ、しばらくしたら起きると思う。状態は……目を覚まさないと、何とも言えないけど」
「……そっか」
呪術高専の女子寮……神城詠子の自室から戻って来た家入硝子は、女子寮前に姿を見せた五条悟の問いに対し、素直に返した。
先日、狗巻棘と乙骨憂太に同行した後から“様子がおかしい”と報告され、硝子が駆り出されたのはつい先程の事……。
「身体に傷は一切なかった。呪いを受けた形跡もないから、恐らくは今アンタが考えている通りよ」
「チッ」
「学長は何て?」
「詠子が起きたら連絡しろってさ。本当は付きっきりで一緒に居たかったみたいだけど、例の商店街の一件絡みでそれどころじゃないって。僕も後で現地に行ってくるよ」
「……まぁ、あの人が詠子のこと一番気に掛けているしね。アンタも人のこと言えないけど」
詠子の“術式”は非常に未知な部分が多く、使用者が受ける反動も謎めいていた……それは五条が一番よく理解しているつもりであった。
呪術高専入学式の前日、実際に彼女の術を目で確認した上で、相手から提案された“勝負”を制し詠子を入学させたのは、紛れもない五条本人である。
当然、教師としての責任もあるが……そこまでして彼らが詠子を気に掛ける理由は、他にあった。
「それで、詠子については何か分かった感じ?」
「いや、まったく。彼女は御三家みたいな“家系”の生まれじゃないし、先祖も調べたけど全員非術師だったよ。彼女の“術式”に関して類似する記録は確かに残っているけど、どう考えたってありえない。……本当、詠子を見つけたのが
「そこは同感。謎が多い分、下手に野放しには出来ないものね。京都の連中は性格悪いし」
「それな〜。詠子が京都なんかに行ったら、総出でイイ
思い当たる最悪の状況を回避したとはいえ、神城詠子に対する“大きな問題”は消えていない。
「詠子は“術式”の使い方を誰かに教わったわけじゃなく、本能的な感覚で使用している特殊な存在……呪術の基礎なんて僕達が教えるまでまったく知らなかった。無駄に知識を詰めて術が使えなくなったら大変だけど、今のところは上手く吸収してくれているし応用もできてる。呪術は、無知でいる“形無し”よりも、正しい知識をつけた“型破り”の方がいい」
「それで……“解決策”は見つかったの?」
硝子の問いに、五条は静かに口端を上げて見せた。
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作者名:神屋之槭樹 | 作成日時:2023年2月20日 0時