猟奇的なキスを私にして (ページ30)

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second regret ページ30

まだフェンロに来たばかりの頃
なにも言葉がわからなくて、麻也くんの後だったから、ドイツにいたときよりもプレッシャーを感じていた。
練習をしているときに、いつもいつも下を向いてしまいたくなっていた頃だった

「またユウキがおちこんでるよ」

「あいつはいつも下を向いてるよな」

英語はよくわからなかったけど、多分そんな陰口をチームメイトに言われていた
悔しくて、でも下を向く俺が嫌で泣きたくなっていた

「あっ、あそこに立ってるの日本人かな」

「日本人いいな！体も小さいし、可愛いし…ユウキのファンかな？」

「黒髪がいいよなぁ～なぁ見ろよ。俺のこと見てるんじゃねぇか？」

「そんなわけねーよ。俺を見てるんだよ！Hey baby-！」

何気なく、チームメイトの話に興味を持って、顔をあげた
サポーターが何人かいる中、君がそこにいた

黒い髪の毛をなびかせて、大きな白いマフラーに顔を埋めて。
丸い黒い瞳でこちらを見ていた
明らかにそこだけ何か違くて、彼女だけが輝いているように見えた

「ユウキ。女をナンパするぐらいならできるだろう？
俺にあの子紹介しろよ！」

失礼な言葉も耳に入らなかった
だって彼女は…俺を見てる
わかる。
俺を見て微笑んでいる

それが初めての出会い

その子にかっこいいとこ見せたくて、俺はその後高校生が彼女に張り切ってるみたいに、一生懸命練習に取り組んだ

シュートが何本も入って、振り返れば彼女も嬉しそうに笑ってて、空に拳を突き上げた

「ユウキ、昨日はどうした？」

祐樹「なにが？」

「ずいぶん調子がいいな」

祐樹「俺はいつだって本気だよ。今日はチャンスに恵まれていたんだ」

そう、恵まれていた
あの子がいるから

祐樹「今日はサポーターにサインしてから帰るよ」

練習後にサポーターのほうへ向かうと、何人かの小さな子供のサポーターと、地元のおじさんに囲まれた。
サインをしつつ周りを見ていると、
あの子は遠くでこちらを見ているだけだった