猟奇的なキスを私にして (ページ29)

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first regret 大津祐樹ページ29

「あーぁ、雪だよ…」

チームメイトが空を見上げて、深くため息をついた
オランダの冬の空にはグレーの深い雲がかかっていて、凍りつくぐらい寒い空気が肌に突き刺さる
鼻に何かが触れて、じんわりと溶けていった
雪だ。

…また冬がやってきたんだな

「雪かきかー！嫌だな」

「彼女のところ行くのも面倒になるしな」

「なんで祐樹は嬉しそうなんだ？」

祐樹「えっ？」

「祐樹変だよな、去年も冬になるとニヤニヤしたり、悲しそうに外を見たりするよな」

祐樹「そうなの？笑」

冬になると思い出す
真っ赤な頬をマフラーに埋めて、にっこり笑う彼女のこと。
手袋もせずに、寒いのにいつもフェンスの向こうで俺を見てた

そんな彼女のこと。

祐樹「俺にだっていろいろあんだよー！」

「祐樹なんて大抵なんも考えてないだろ？笑」

失礼だな、おい！
俺にだって純愛があるんだよ！

ーー「大津さん」ーーーー

俺を呼ぶ声が思い出される
この冬になるといつも
彼女のことばかり考えてる

そこにはいないのに、フェンス越しからその黒い髪の毛を探してはため息をつく

自分の白白い息に、思い出を重ねては切なく思う

あの時俺の全てであって、今でも変わらない存在の彼女のことを。