Another Card (ページ8)

今日:6 hit、昨日:0 hit、合計:13,355 hit

寒中水泳その後8 ページ8

「・・・ふむ、流石だな。美味い。」

「ありがとうございます。恐縮です。」

福本は恭しく頭を下げた。

「どうせ、家に帰ってもご飯を作って待っている嫁はいないんでしょう？」

「冷えた飯食ってるぐらいなら、ここで食べて行った方がいいですね。」

「三好、波多野！貴様ら俺を何だと思っているんだ！？」

「え？佐久間さんって所帯持ちでしたっけ？」

実井が不思議そうな顔で佐久間に尋ねる。

「・・・いや、まだ独り身だが。」

「誰か付き合っている人は？」

甘利が話に乗ってきた。

「いや、いない。第一、俺は軍人だ。国の為に忠義を尽くすこそ男子の本懐。そんなうわついた気持ちで務まるか。」

「また、お堅い事いっちゃって。」

三好が呆れたように言った。

「じゃあ、秋山とかどうです？」

神永が秋山を指さした。

「はぁ！？」

思わず間抜けな声を出してしまった。

どうしてこっちに話の矛先が向かってきたのだろう。

からかっているとしか思えない。

秋山は神永を睨みつけた。

第一、Ｄ機関に女がいると露見すると色々と面倒なので、秋山は佐久間に対して男として振る舞っているというのに。

「神永、それは・・・」

「何言ってるんだ、秋山は男だろう？神永、お前飲み過ぎてないか？」

小田切の言いかけた言葉をよそに、佐久間がさも不思議そうに言った。

「「・・・・・・。」」

一瞬の沈黙。

(やっぱり、気づいてなかったか～。)

(まだ、男だって騙してたのか。)

(うわ、佐久間さん可哀そう。それにしても鈍感過ぎだろ。)

(秋山も人が悪いな。もう本当の事言っていいんじゃないか。)

言わずともそんな声が聞こえてきそうだ。

居たたまれない雰囲気になった。

機関員たちは憐れむように気の毒そうに佐久間と秋山を交互に見ている。

「ははっ！ですよね～。もう何言ってるのか・・・。」

(今度こいつら皆しめてやる。)

秋山は引きつり笑いをしながらそう誓った。