寒中水泳その後6 ページ6
「赤ワインですか。鍋だったら白の方が合うと思うんですけど。」
「嫌なら飲むな。僕があちこち探したんだぞ。」
三好が実井を睨む。
「おい、焼酎用意したの誰だよ？」
波多野が怪訝そうな顔をして酒瓶を掴んだ。
「僕ですけど？」
「実井かよ。お前、顔に似合わず渋いの飲むな・・・。」
「やだなあ、そのまま飲む事はあまりしないですよ。フレーバー水で割って飲みますよ。」
(きっと焼酎：フレーバー＝8：2ぐらいなんだろうな・・・。)
秋山は波多野と実井の会話を聞きながら秘かに思った。
「この日本酒、一級品じゃないか。誰のだ？」
甘利が目を輝かせている。
「俺だが。」
小田切が静かに手を挙げた。
どこで手に入れたのだろうか。
(小田切は機関員の中では飲まない方だと思っていたが、意外と日本酒は好きなのかもしれない。)
「いいの持ってるじゃないか、小田切。俺にも分けて！」
神永が横から割り込んできた。
「ああ、別に構わないが。」
「へえ、｀深雪´って銘柄か。では私も一杯。」
小田切の日本酒を飲むと真水のように飲みやすく、辛口のすっきりした味わいで喉がじんわりと熱くなるのを感じた。
「鍋に会うのはやっぱり冷よりも熱燗じゃないか？」
福本が酒を煽りながらぼそりと言った。
「俺はどんな料理にも冷の方が味が分かって良いと思うが。」
どうやら小田切は冷で飲む方が好きなようだ。
「田崎の持ってたのってウイスキーでしょ。ウイスキーって薬品みたいな癖のある匂いがするから好きじゃないんだけど。」
秋山は田崎がウイスキーの瓶を開けるのを見て、眉をひそめて言った。
「そうかな？俺は好きだけど。」
そう言って田崎は自分のグラスにウイスキーを注ぐ。
「安い酒は何でもそうだよな。飲み味が悪い。」
「甘利の言う通りだな。でも、最近は日本でもまともなウイスキー作ってるぞ。まあ、騙されたと思って飲んでみろ。俺がお薦めする。」
そう言って田崎は秋山のグラスにウイスキーを注いだ。
「本当かな・・・？」
半信半疑で一口ウイスキーを煽ると思ったよりも飲みやすい。
木香のような甘い華やかな風味がした。
「思ってたよりずっと美味しい。」
「言った通りだろ？」
田崎は得意顔だ。
機関員たちは好きな酒について語ったり、自分の酒を相手に勧めたり賑やかに過ごしていた。
こうして飲んでいる姿はどこにでもいる大学生の集まりのようであった。
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作者名：有馬 | 作成日時：2017年1月7日 22時
