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稽古2 ページ13

D機関では高名な大学教授やその道のプロが招かれて講義が行われる。


帝国大学の教授や、珍しい所では服役中の金庫破りの名人、プロのジゴロまで招かれる。


無論、結城中佐自ら講義を行うこともある。



しかし、彼らも忙しい。


予定通り来られない事もある。



今日の場合は、午後からの剣術稽古はとある道場の老師範が教える事になっていた。

D機関での武術訓練は剣術、柔術、合気道、空手など多岐に渡る。



もちろん、殺す為ではなく、いざとなった時に己の身を守るための一種の護身用である。



しかし、剣術を教えていた老師範は腰を痛めてしまって来られなくなったらしい。





(一体、誰が来るのやら・・・。まあ、誰だとしてもさして変わりはないけど。)




そんな事を考えながら、秋山は白の道着に紺の袴に着替えた。


そして、訓練生たちは武道場に向かった。





「お願いします!」





彼らは武道場の引き戸を開けた。



見ると、武道場の中央に陽光を浴びながら正座している男がいた。

紺の道着に紺の袴。


その姿は凛とした佇まいであった。

口を真一文字に結び、静かに瞑想していたが、武道場の引き戸が開かれたのを聞くと男はゆっくりと目を見開いた。




「佐久間さん!?」


「何でここに?」


三好と神永が次々と言った。


「今朝、結城中佐に言われてな。お前たちの剣術稽古をつけてくれないかと頼まれたんだ。・・・最初は俺なんかに教えられるものかと断ったんだが、どうしてもと言われて引き受けた次第だ。」




「そういう事だ。」


不意に、結城中佐が背後に立った。




学生たちはぎょっとして後ろを振り返った。




「よろしく頼むぞ、佐久間。」


「はっ!自分でよければ。・・・それで、自分は何を教えればいいのですか?」


「貴様は学生たちと試合をしてくれ。ここにいる学生たち9人全員だ。」


「全員ですか?構いませんが。」




「結城中佐。」


三好が割って話しに入った。



「何だ?」


「お言葉ですが、佐久間さん一人に対して9人で挑むにはいささか我々側に有利過ぎると思うのですが。」


「ふん。大した自信だな。それで貴様らは必ず勝てると?」


三好は口をつぐんだ。




佐久間と共に稽古した事はない。


相手の実力が分からない以上、可能性として必ずと言い切れる事はないのだ。






「これから貴様らには佐久間と試合を行ってもらう。諸君、励めよ。」


結城中佐は学生たちを見回して、ニヤリと笑った。

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作者名:有馬 | 作成日時:2017年1月7日 22時

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