ずっとあたたかい愛の中で (ページ5)

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来てしまったタイムリミットに、僕は息を飲んだ。
どんな顔をするかなんて決まっていないが、きっとなんとかなる。そう願いながら、彼の登場をを待つ。

「……？」

しかし、扉はなかなか開く気配がない。

「伊沢……？」

向こうへ呼びかけると、ようやくドアが少しだけ開いた。

「オハヨウゴザイマス……」

「なぜ片言」

ドアを半分も開けずに、伊沢がひょっこりと顔を覗かせた。
……否、のぞかせているというのか。
こちらからはあの黒髪が少し見えるだけで、伊沢の表情まではうかがえない。

「えーと、伊沢さん？」

「……はい」

この状態で会話する気なのか、こいつは。

「あの、別に怒ってないから……」

「ほんとですか」

少しだけ顔が見えた。
許しを乞う子犬のように、不安げな表情をしていた。
それになんだか気が抜けて、悩んでいる自分がバカバカしくなってきた。

「本当だって」

手招きをすると、導かれるように伊沢がこちらへ出てきた。
シャワーを浴びてきたようで、僕とは違いTシャツとジャージのズボンを身につけている。
その表情は未だしゅんとしていて、本当に犬みたいだ。

「本当にすみませんでした。酔っていたとはいえ、河村さんに酷いことを」

彼の謝る姿は、「しおらしい」という言葉がぴったりだった。
別に怒っていないからと伝えても、彼はその態度をかたくなに辞めない。

「酒の過ちなんてお互い様だろ？気にしなくていいから、本当に」

僕が言っても、彼は「いや、」と言うばかりだ。
うるさいな、僕がいいって言っているのに。

「それで、あの……」

伊沢の言葉が詰まったから、僕は首を傾げた。
彼は言いにくそうに少し下を向いた後、何かを決心したようにこちらを見た。
何を言われるかわからなくて、その目をじっと見つめる。