ずっとあたたかい愛の中で (ページ12)

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ふくらと別れてから、直ぐに伊沢に連絡した。
まだ帰っていなければ諦めようと思っていたのだが、今日はテレビの収録が早く終わったためもう家にいるらしい。
そっちに行ってもいいかと訊ねれば嬉しそうな返事が聞こえて、心がぎゅっとなった気がした。

「やあ」
「1日ぶりです」

適当な挨拶をして、勝手知ったる家に上がる。
迎えにでてきた伊沢にハグを強要されるのも、もう習慣みたいなものだ。
広げられた腕の中に入ると、汗ばんだ首元から伊沢の匂いがした。筋トレでもしていたのだろうか。

「……河村さん酒飲みました？」

くんくん、と口元を嗅がれる。さすがに嫌なので無言のまま手で顔を退けると、「さーせん」とくぐもった声が聞こえた。

「ファミレスでふくらと。とは言ってもそんな飲んでないんだけど……におう？」
「いや、もしかして？くらいですかね。…つかふくらさんずるい。俺も河村さんと飲む……いいでしょ？」

体を離した伊沢が訊ねる。
首を傾げてお願いするその姿はわんこみたいで、胸がきゅんと鳴った。

「仕方ないな」
「やったー」

伊沢はそう言って、嬉しそうな笑顔を浮かべた。

あいつはかつてあんなに表情豊かなやつだったかなあ……そう、ふと思った。
少なくとも、こんな笑顔は付き合ってからしか見たことがない気がする。
こんなに優しく微笑みかけられるのは、恋人の特権なのかもしれない。そう思って、頬が緩んだ。

リビングに入ると、冷蔵庫を払拭する伊沢が目に入った。
楽しそうな声色で、「河村さんの好きなやつ買っときましたよー」なんて言っている。
その姿を見ていたら、急に愛しさみたいなあたたかい何かが溢れた。
なんだろう。今日は、特段伊沢が好きだな。

「じゃ、飲みますか」

冷蔵庫パタンと閉まった。

『後ろからとか？照れた顔みたいなら、ぎゅってしてみるとか』

伊沢の無防備な後ろ姿に、ふくらの言葉が頭に浮かんだ。
今しかないのではないかと、自然と体が動く。
今ならこの愛おしさで、羞恥心をも覆えてしまえる気がしていた。

「伊沢」

伊沢が振り向こうとするのを止めるように
腕の下から腹のほうへ腕を回して、抱きしめた。
続けて、少しあたたかめの体温に体を寄せる。