恋情クロニクル (ページ30)

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ほうかご反省会。ページ30

＊Iroha side＊

「おめでとう！」

他人の事なのに屈託のない笑顔で祝福する彼。

「別に。付き合ってないから」

能天気でアホっぽい。そういうところが…

「えっ、なんでぇ！？

体育祭で一緒に告白しようって言ったやんか！」

「アンタが勝手に決めただけでしょ」

「やっぱ、ちゃんと約束しておくべきやったな！」

好き、なんだよなぁ。

私、田中彩葉は八方美人のぶりっ子だ。
自分でも気づいていて、むしろ意図的にそうしてる。

他人より少しだけ整った顔とスタイル。

目を惹くようなその容姿は、1番嫌いなものだった。

勝手なイメージで決めつけられた性格と
実際の私の性格が少しでも違えば離れていく人々。

告白をされるのは嬉しかったが、同性には憎まれた。

出来る限り多くの人に好かれる為の行動が
ぶりっ子だった。

どうすれば好かれるか分からない女子よりも、
理想の性格を演じていれば
好きでいてくれる男子の方が楽だった。

好かれれば好かれる程、いじめられるようになった。

それを助けてくれたのがヤス。

「安田くんっ！さっきはありがとぉ〜！」

「無理して自分繕っててもええことないよ？」

あざとい上目遣いをサラリと避けられ、
ケロッとした顔でそんな事を言われた。

衝撃的なことだった。

今まで関わりもなかった人なのに

分かったように言われて嬉しいような
苛立つような初めての気持ち。

「あんたに何が分かんの？助けてくれたのは感謝するけど、
人の生き方に口出ししないで」

「ん、そうやなぁ。お節介やったわ〜。
でもやっぱり、俺は今の君の方が好きやで。」

天然タラシとはこういうことか、

飄々としていてほんわかを崩さない

それでも人のことをしっかり見抜いている。

敵わない人だ、その言葉がしっくりときた。

他人に認められるためのぶりっ子は未だに辞められないけど
いじめに反抗したら女の子の友達も少しできた。

ヤスのおかげ、なんて絶対に言わないけど。

ちょっとだけ恩返し、してあげても良いかな。
ちゃんとそう思ってたのに…。