恋情クロニクル (ページ29)

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繋がれた手から伝わる熱が心地よくて
でも少しだけ気恥ずかしい。

いつもより速い鼓動は
慣れないことをしているからなのか
目の前の彼のせいなのか。

「髪色、変えたんだね。」

「そぉ！気づいたぁ？
Aちゃんはこんなん好き？」

「うん。カッコいい、と思う」

はぐらかして答えたけど
正直に言えば、好みのタイプだった。

本当に…王子様みたいな。

会話の内容は普段と何も変わらない。
章ちゃんも髪色以外に変わったところはない。

それなのになんで、
こんなにドキドキしちゃうんだろう。

背丈もそんなに私と違わないけど

手は大きくてゴツゴツしてるなとか、

意外と力強いんだなとか、

至近距離で顔みると凄く整ってるなとか。

意識するには十分過ぎて、目も合わせられずにいた

　
「なんで、こっち見てくれないん？」

今までにこやかに話していた
章ちゃんはきょとんとした顔をしていた。

純粋に疑問とでも言うように。

「今日の章ちゃん、王子様みたいだから…」

「なぁに照れてるん？かわええなぁ」

〜Yasuda side〜

今の俺にできる最大の攻撃。

本当はダンスするだけで終わらせるつもりなかった。
告白しようと気合い入れて卒業した黒髪も意味なかったんかな。

いや、Aちゃんがカッコいいって言ってくれただけで
意味はあったはずや！

体育祭後に部室で1人反省会なんて恥ずかしい奴やな

「ほんと、意気地なし。」

入り口の方から俺に向けられた言葉。

発したのは田中彩葉だった。

「田中ちゃんは大倉と上手くいったみたいやね。
おめでとう！」

ギターを持つ手に力が入る。