恋情クロニクル (ページ28)

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連れて来られたのは非常階段

お話しよって言ったのは彼の方なのに
お互いなかなか開かない口に気まずさが残る。

「逢坂Aさん、
俺と一緒にダンスを踊ってくれませんか？」

改まって言われた言葉に緊張してしまう。

ただのダンスのお誘い、それだけのはずだけど

告白のような、あるいはプロポーズのようなそれに
私はすっかり見惚れてしまった。

「わ、私でよければ、お願いします！」

「良かったぁ〜！
Aちゃんとダンスするん夢やってん！」

大袈裟なくらいに喜ぶ章ちゃんを見て
とても嬉しい気持ちになった。

残りの休み時間は章ちゃんと雑談をして過ごした。
　

教室に戻るとある話題で持ちきりになっていた。

「聞いた！？

大倉くん、田中さんの誘いをうけたらしいよ！」

「たしかにお似合いやんなぁ。」

「2人とも軽音部や！
このまま付き合うんと違う？」

「ほんま？賭けるかー？」

「美男美女カップル誕生や！」

特に約束もしていない私には関係のないこと。

あたたかな嬉しさで満ちていた私の心は

あっという間にどす黒くドロドロな液体に
かえられてしまったのだ。

こんな気持ち知りたくない。
キラキラとして楽しいだけでいたいのに。