おかえり ページ11
〜Yokoyama side〜
土曜日の夜に、俺は中華鍋を振ってる。
普段は当番じゃない日に料理なんかせんのに
「ただいま〜。今日は炒飯？いいなぁ」
いつもより着飾った従姉妹が帰ってきた。
今日は、晩飯を各自で用意することになってる土曜日。
「おかえり。Aも食べればええやん」
「えっ！？ 私の分もあるの？」
「おん。多く作りすぎてもうたわ」
ほんまは一緒に食べたかったなんてよう言われへん。
皿に盛ってテーブルに置く。
「ありがとう！いただきまーす！」
「どう？」
「すっごくおいしい！侯くんお店だせるよ！」
最初は人見知りして大人しかったAが
心を開いて懐いてくれるのが嬉しい。
「そんなうまいん？別にいつでも作ったるよ」
口いっぱいに頬張りながら笑顔で頷いた。
なんでもしてやりたくなる子やなと柄になく思う。
「今日はデートやったん？」
一番気になっていたことを聞く。
昔から知ってるお前が大人っぽくなるのは、なんか嫌や。
「ち、違うよ！部活の人」
つい安心してしまった。
でも、そいつが男やったら絶対狙われてる。ほっとかれへん。
「ねぇ侯くん。バイトってどんなのが良いかな？」
ぼーっとしてたら、そんな話題になった。
「はぁ！？お前、バイトするん？」
「うん。学校にも慣れてきたから始めようかなって」
「あかん。絶対、あかん！！」
「なんでよー？侯くんだってしてるじゃん」
高校生って放課後か土日やろ？
土日はともかく、バイト始めたら
どうせ放課後もシフト入れられるやん。
そんなん危なすぎやろ。
俺も毎回、送り迎えできる訳とちゃうし。
「大学生になってからじゃダメなん？
放課後にバイトする事になったら危ないで？」
「大丈夫だよ！友達にもしてる人いるし」
「そういう問題ちゃうやん。俺は心配してん」
「今日の侯くん、お兄ちゃんかお父さんみたいだね」
Aの言葉がグサッと胸に刺さる。
なんでかは分からん。
これ以上は何も言えなくなってもうた。
「もうええわ、バイト先決まったら見に行くからな」
「ありがとう。侯くんに一番最初に教えるね！」
彼女に一喜一憂させられる俺は
自分で思ってたより大人じゃないみたいだ。
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作者名：YAMAＤ | 作成日時：2021年3月31日 0時
