「好きだよ」 (ページ10)

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60話　side-ab ページ10

今日は第4週の土曜日。
私はまだお父さんと弟が寝ている時間に、最低限…勉強道具やスマホ、交通費だけを持って静かに家から出た。

…明け方のまだひんやりしている空気が肌を掠める。
朝5時前に歩いている人なんていないからまるでこの道を占領した気分になる。
少し明るくなり始めた空を見てそんなことを思った。

スマホを見れば5時10分と表示されている。
このペースで行ったら始発に乗れるはず。
「万が一を考えて、少し早歩きで行くか」
私は１人そう言うと、早歩きで最寄り駅に向かった。

6時頃、目的地に向かって電車に乗っていると弟からメッセージが届いた。

弟姉ちゃん、今電車?
abそうだよ
弟お母さんにはなるべく早く帰るように言っておくから
abありがとう

弟にそう返信してスマホをかばんに突っ込んだ。

『次は～◯◯～◯◯～。
お出口は左側です』
音楽を聴いていると電車のアナウンスが流れてきた。
そろそろ目的地の最寄り駅につくみたいだ。

駅から出て目的地まで歩く。
小さい頃の私ならすぐ迷ってしまいそうな道だけど、月に1回通ってしまえばそんなことなんてない。

駅から徒歩20分。
住宅地の中に目的地はある。
インターホンを押したらすぐにドアが開いて。
『いらっしゃい、亮平。もう朝ごはんできてるよ』

「おじゃまします、おばあちゃん」