27話 side-mm ページ27
ドアを開けてもおかえり、の声が聞こえないことにもう慣れてしまった。
弟は今日バイトがあるから帰りは遅くなる、とメッセージが来ていた。
母を刺激しないように音をたてずに、いつものように自分の部屋に行こうとすると、リビングから何かが割れた大きな音がした。
そっとドアを開けると、割れた花瓶と紫色の花が散らばっているのが目に入った。そして床に座り込む母の姿も。
母は何かぼそぼそと喋っている。スマホは持っていないから独り言のようだ。
『…は…くない。…い…は、全部……』
断片的にしか聞き取れなかったので、耳を澄ませて集中する。
すると、母は泣き出してこう続けた。
『どこで私の人生間違えちゃったの？結婚したとき？蓮が生まれたとき？蓮をはじめて叱ったとき？蓮がはじめて私に反抗してきたとき？蓮が、蓮が、
女の子を好きになってしまったとき？』
その言葉を聞いた途端、まるで体に重りがつけられているみたいに動けなくなってしまった。
『蓮は私の希望だったのに。私は反対したのに！蓮は！蓮は！』
『今の蓮は私が産んだ「蓮」じゃない！今の蓮は偽物！私が、私が、はやく本物の蓮を見つけなきゃ！蓮、蓮、どこにいるの？』
『偽物はいらない。こ ろさなきゃ。あいつがいるから私の蓮は帰って来ないのよね』
『蓮、待ってて。お母さんが迎えにいくからね』
…違うよ。偽物の蓮なんていない。
私が『お母さんが産んだ本物の蓮』だよ。
なんて言えたならどれだけよかったのだろうか。
母は泣きながらずっと私の名前を呼んでいる。
『何してるんだ蓮、こんなところで』
弟ではない男の声が後ろから聞こえた。
なんで、今日はいつもより帰ってくるのが早いの。よりによってこんなときに。
…父さん。
『…蓮？』
ずっと私の名前を呼んでいた母がゆっくりと振り返った。その顔に表情はない。
『違う違う違う違う蓮じゃない！この偽物！早く蓮を返して！私の蓮を返して！あんたはいらない！』
私が蓮だよ、なんて言えなくて口をつぐんだ。
そんな私を見た母は、近くにあった花瓶の破片を手に取るとそれをこっちに向けた。
『こ ろすこ ろすこ ろすこ ろすこ ろすこ ろす！！』
びゅんと破片が空を切る音がして慌てて避けた。
が、床が濡れていたのか足を滑らせて床に背中を打った。
母は殺意むき出しのまま私の上にまたがるとこう言った。
『もう、し んで』
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貞光(プロフ) - あおいさん» mmは右派の方はあまりいらっしゃらないので、私も嬉しいです！ (2020年4月13日 14時) (
レス) id: e8d1c52f35 (このIDを非表示/違反報告)
あおい - mmは私右派なんで嬉しいです（） (2020年4月13日 9時) (レス) id: 888c904e00 (このIDを非表示/違反報告)
貞光(プロフ) - ま み た そさん» コメントありがとうございます。これからも頑張りますのでよろしくお願いします。 (2020年3月30日 20時) (レス) id: e8d1c52f35 (このIDを非表示/違反報告)
ま み た そ(プロフ) - 初めまして、こんばんは。mmちゃんにょたのお話は見るのが初めてなのですがとても続きが気になりました。これからも頑張ってください。応援しています。 (2020年3月30日 19時) (レス) id: e6986a63c1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：貞光 | 作成日時：2020年3月28日 14時
