#37 ページ38
そして余計に赤く腫れた目をメガネで再度隠してしまう
「…名前、チーノで」
智野くんは鼻声混じりで、且つ冷静に言葉を放つ
その響きに馴染みがあった
『ちのくん』
朋花が名付け、朋花だけが使ってた渾名
漢字に弱い彼女が振り絞って出した読み方
バイト先でよくネタにしてたっけ、
あの頃の、笑いの絶えなかった時間がじんわりと胸に広がりどうしようもなく泣きたくなってしまう
もう遠い昔の事みたいだ
同じ気持ちだったのか、眉を大きく下げて智野くんはこちらを見た
「…アレ気に入ってたんよ、」
智野くんがへにゃりと笑った拍子に、涙の残滓が頬を伝う
「おけ、割と早く決まったな…チーノ、お前は今から死ぬまでチーノや。サトノくんは死んだ、ええな？」
「ウス」
「理解が早そうで助かるわ」
話の続きはまた後でしよう、そう言ってこちらを見た
私がいない所で、の言い換えである事は明白だった
「拠点戻る前に、Aさんを送ってからにしよか」
_______________
「ふーん、それで？」
「それで戻ってきたんですよ」
で、オレが居た、と
そう言いながらしゅるしゅると林檎の皮を剥いていくロボロさん
いつも着物の袖から指先だけ覗かせている彼が名一杯に林檎を掴む様になんとなく驚きを覚える
背丈が中高生くらいだったからそんなものだろうと思っていたが、口調から察するに桃瀬くんと同じかそれ以上かもしれない
思っていたよりもしっかりとしていた掌と刃物を扱う手つきに身惚れる、桃色よりも濃い瞳が愉快そうに目を細めてこちらを見た
「なぁに？」
特に、と首を振ると残念そうに切り身を私の口に押し付ける
「なんや、お腹すいた訳ちゃうん？」
口を開けて林檎を受け入れる、しゃぐしゃぐと咀嚼音が響いた
いつだってロボロさんが持ってきてくれる果物はおいしい
「ちょっと、空いたかなってくらいです」
「ギリギリまで枯渇して赤ちゃんみたいなまま食べるのとどっちがええ？」
「…今頂いてもいいですか？」
林檎を置いてこちらに向き直るロボロさん、
幼児退行するレベルの飢えは私の体に負担が大きい
それより前に摂取するのが良いと聞いたが、いかんせん枯渇状態と違いまだ理性があるのでこの行為は大変恥ずかしくもある
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恐竜少女(プロフ) - 燕さん» お返事ありがとうございます！需要あります…！ずっとやったりしないのかな…と気になっていたのでお返事頂けて嬉しいです！始められたら真っ先にフォロー向かいますね！こちらこそありがとうございました！ (2020年12月15日 21時) (
レス) id: 502e5707b6 (このIDを非表示/違反報告)
燕(プロフ) - 恐竜少女さん» 嬉しいお言葉ありがとうございます！とても喜びました！Twitterはやってません…需要あるでしょうか？みなさんがTwitterでどんなお話をしているのかは気になりますね、コメントありがとうございました！ (2020年12月15日 20時) (レス) id: 3ea3cbd8c6 (このIDを非表示/違反報告)
恐竜少女(プロフ) - 燕様の作品を全作定期的に読み返すほどどの作品も魅力的で大好きです…！失礼を承知でお聞きするのですがTwitterをされる予定などはないのでしょうか…？お気を悪くされましたら申し訳ございません…… (2020年12月15日 2時) (レス) id: 502e5707b6 (このIDを非表示/違反報告)
燕(プロフ) - 名前さん» ストレートな言葉で照れました…ありがとうございます (2020年12月2日 16時) (レス) id: 2e704aa56d (このIDを非表示/違反報告)
名前(プロフ) - 好きだ… (2020年11月29日 17時) (レス) id: 822832712f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：燕
| 作成日時：2020年7月26日 11時
