放課後ノート 2nd【赤葦京治】

Last 放課後ノート ページ29

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「俺たちは、これがきっかけだね」



そう言って私から離れ
パタンと閉じたノートを、ちらつかせる京治。



「は、恥ずかし、い…」



うまく、声にならない。



「…A。今日は休息ってことで、勉強やめてどこか行こうよ」

「えっ…」

「残りの日、頑張れば大丈夫。それよりも…Aのそんな顔、誰にも見せたくない」

「あ、え…」



固まりかける私に
京治が言う。




「テスト期間だけど、初デートってことで」




…っ。



クスッと笑って片づけを始めた京治を見て
胸の奥がきゅぅぅっと締め付けられた。




…私も、行きたい。



京治と並んで歩きたい。





また少しぼやけ始めた視界を


グイッとこすって


私も片づけを始めた。






「行こ」




そう言った京治に手を取られ
そのまま繋がれた。



ドキドキした胸はおさまらないまま




図書室の出入り口へ向かう。








図書室は、西日が射し込んでいて。



それはまるで私が
京治に初めてノートを借りた
あの日の西日のように、眩しくて。




そういえば京治にドキドキし始めたのも。




笑った顔が、いいなと思ったのも。




それで、好きになったのも。




少しだけ、悩みの種となったのも。




連絡先を教えてもらったのも。






…あなたに、告白されたのも。





私が想いを書いて、かわいい付箋を貼ったのも。






すべてのきっかけは









借りて…放課後、写したノート。









「え、Aちゃん？」



図書室を出たところで偶然
この間私を呼び出した先輩たちに遭遇した。



あ、と思っていたら
口を開いたのは京治で。




「先輩。この子、俺の彼女ですから。失礼します」




そう言って私の手を引いて
問答無用で歩き出した京治の背中を見て。





好き、と伝えたくなった。






……でもその２文字を
書こうか迷っていた付箋も
きっともう、必要ない。






今度は直接、口で伝えられるから。






「京治、ありがとう。……好き」





バッと振り向いた京治は
私の頭をくしゃりと撫でて。






西日に照らされた廊下で





「俺もだよ」





と、呟いてくれた。





放課後の西日は
繋がった２人分の影を


優しく、オレンジ色に染めたままだった。







Fin.



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