６歩目 ページ6
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─黒尾side
ポケットから、ヴーッヴーッ と振動が伝わってきた。
混んでる中にいるのに誰だよ。
電話出るのも一苦労だっつーの。
ディスプレイを見て、相手を確認。
Aかよ。
ク「…もしもし？」
なんだよ？と、用件を聞こうとしたら。
「クロさん。頼みがあります！！！」
声でけぇ。うるせぇ。
ク「なんすか。つーか、充分聞こえてっからもー少し静かに話せ。」
「あのね、いま私からは君が見えている。」
ク「は？だからなんだよ？」
と言いつつも、それなりに周りを見渡して姿を探す。
あ。いた。
こういう人がたくさんいる所でも、背ぇ高いと困らねぇな。とか、全然関係ないことを考える。
それよりも。
…ブンブン手ぇ振ってるんですけど。
すげー嫌な予感。
幼なじみの勘ってヤツ？
「お。気づいた！そこでお願いです、私の好きなメーカーのココア！わかるよね！？買ってきて！！」
ク「………」
はぁ！？
あいつ、俺をパシるのか。そうかそうか。
と、文句の一つでも言ってやろうと思ったけど、この混み様がキツいのは今ここにいる俺が実感してる。
Aも一応、女だしな…ここに来て揉みくちゃにされるのを想像して、プッと少し吹き出す。
それに、あいつの好きなココアも、わかる。
ク「…はぁ。仕方ねぇなぁ。ちょっと待ってろよ？」
たまには、折れてやるよ。
「ちょ！何で今ちょっと笑ったの！？…まぁいいや。ありがとう、クロ。ここで待ってる！」
電話から聞こえる嬉しそうな声が、ちょっと心地良かった。
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作者名：ゆう
| 作成日時：2016年1月17日 6時
