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覇の回33 ページ33
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捜査一課から依頼された指紋の照合をしながら、安田はぼんやりと考えていた。
丸山のことをまだ相棒と呼べないと言った有栖川の瞳を、安田は忘れられなかった。
「もう、1年経つっちゅうに、アカンな…」
写真立ての中には自分を含む3人の男女が写っている。
満面の笑みを浮かべる自分。
爽やかなアイドルスマイルを浮かべる男。
そして、そんな2人に挟まれピースサインをしている有栖川。
彼女がこんな風に笑わなくなってから、もう1年だ。
この1年で、彼女は全く変わらなかった。
周りの環境はどんどん変わっていったのに、それに付いていけず有栖川はどんどん置いていかれる。
その状況をただ見ているだけしか出来なかった安田は、そっと写真立ての中の男に声を掛けた。
「もう、1年やで…。
にの、俺には何が出来るやろ？」
彼は、二宮和也は何も答えない。
当たり前だ。
彼はもう居ないのだ。
「アリスちゃんが笑わんくなって1年。
にのが死んで1年や」
はぁとため息を漏らし、自嘲的に笑う。
あほらしい。こんなに感傷的になるのは。
全く、自分らしくない。
「やっぱ、にのには適わへんわ」
フッと笑って、ポケットから新しい煙草を出した。
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作者名：ゆう☆
| 作成日時：2016年2月18日 3時
