覇の回31 ページ31
･
「刑事さん、それじゃあまるで息子を疑ってるみたいやないですか」
沈黙を破ったのは桐山の父親だった。
望と同様に関西弁で喋る父親は尚も続ける。
「大体中の良かった兄貴をなんで望が殺さなアカンねん。おかしいと思いませんか？
わざわざ一旦帰宅して照史を殺し、また学校に戻る。いつ職員会議が終わるのか、いつ委員会が再開されるか分からへん状況でそんなことしますかね？
ハイリスクやと私は思うんですけど」
「確かにリスクはかなり大きく、職員会議も臨時だった為計画的な犯行ではないことが分かります。
上手くいく保証なんて何処にもありません。
それに望くんを容疑者だと断定する証拠はありません」
「だったらそんな息子を疑うようなこと言わないで……」
「ですが、」
父親に被せるように言葉を放った有栖川。
先程までの鋭い瞳は、今は父親に向けられている。
「ですが、望くんが容疑者ではないと断定することも出来ないんです。
状況証拠が揃っている以上、彼を捜査線上から外すわけにはいきません」
それに、と付け加えた有栖川は、再び視線を望に向けた。
「初めて君に会った時、君は私の目をじっと見つめて逸らさなかった。それは君が何か私に伝えたかったからじゃないの？
君はまだ誰にも話していない"何か"を私に訴えていたんじゃないの？」
スッと小さく息を吸うと、望の瞳をじっと見つめ逸らさず言葉を紡いだ。
「君は一体、何を隠しているの？」
･
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 225人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ゆう☆
| 作成日時：2016年2月18日 3時
