ロジック (ページ3)

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「…どうしてそう思うんですか？」

「…原因は僕にあるんです」

「と、言いますと？」

「…本当に好きな人ができました」

目を左へ右へと動かして、一呼吸置いたあと彼が呟く。

【本当に】
その一言が、胸にずん、と重たい鉛のようにのし掛かる。

「好きな人、ですか」

「…はい」

「どうしても、その人なんですか？」

「…はい。どうしても、です」

今まで俯きがちに話していた彼は
意を決めたのか、まっすぐに私を見て、言い放つ。

「どうしようもなく、好きになってしまいました。家柄とか、身分とか、未来とか、関係なくただ、会いたいと…思う人です」

あくまで、まだ婚約者である私に対して
あまりにも残酷で、それでいて淀みのない瞳。

…こんな顔を、今まで私に向けたことなどあっただろうか。

こんなに不躾で、いてもたってもいられない衝動に駆られた、恋をしている男の顔を。

その顔が、私に真実を突きつける。

彼の心が、私のそばにあったことなどなかったこと。
「やっぱり」というその言葉のとおり、彼は私と人生を添い遂げることにずっと迷っていたこと。
敷かれたレールの上を共に歩んでいたと思っていたその姿は
遠く遠く、私のはるか前まで行ってしまったこと。

…全部、今はじめてわかったことだ。

なんの問題もない、なんて思っていたのは
どうやら私だけだったみたい。

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