ぺんぺん草３【安井謙太郎】

112. ページ12

.






「ねぇ、安井くん」



安井「ん？」







優しい目の、ん？が、私を心ごと大きく包み込む。






「このぺんぺん草、適当にたまたま渡したみたい

だったけど、それって、本当に適当？」




安井「…え？」




「まさかだけど、ぺんぺん草が生えてるこの道を

あえて通った？？」




安井「……」







答えないことが、答えだ。







「…偶然にしては出来すぎてるよね。

だって、今調べた時に見た

ぺんぺん草の花言葉ってさ、」







気づけば、強く、強く、抱きしめられていた。







「…安井、くんっ…」






安井「…これからの俺の人生、全部、あげるよ」








強く抱きしめられたまま、



そんなことを言われた。









安井「…全部……全てをかけて、Aを守る」







安井くんの匂いと、大好きな落ち着く声。







安井「……A」







そのときに、





自然と溢れてきたのは、






今までの十数年にわたる







″好き″という気持ちを表す







大粒の涙で。









安井「………好きだよ…」









その涙が溢れたとき、頭上からも


同じものが降り注いだ。









「……好き…大好きだよ……安井くん…っ、

昔から、ずっと……守ってくれて、

ありがとう……大好きだよ…」






安井「…っ」









小さな、声にならない声を前に、


顔を上げるのはやめようと思った。





泣いてるかも、って、そう思ったから。

113.→←111.

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す