春の線香花火 ２

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Aside





次の日、廉と会う約束の前に

ジッとしていられなくて歩いて

なんとなく駅の前まで行くと

駅の前のベンチに座る人を見つけた





「…桜さん」





それは、私の最大のライバル・桜さんで。



桜さんも私を見て、小さく会釈をした。



このまま見なかったことにして去ろうとしたけど

それもそれでなんか大人気ないし

負けた気がするな、なんて思って




間隔を開けてベンチに座った





「…お久しぶりです」



桜「…お久しぶりです」



「…結婚するんですよね？

それを廉に言いにきたんですか？」





そう聞くと俯いて何も答えない桜さん

なんだかその表情が暗く見えた



桜の木が無くなっていたことに

ショックを受けたのかもしれないと

なんだか胸が痛くなった





「…つい最近まで、廉はあの桜の木の下に

よくいたんです。もういないと思ってました？」



桜「ううん、たまたまここに来た友達が

廉が桜の木の下に座ってるってことを聞いてて

知ってたんです」






知ってたという事実に驚く。


知ってたということは、廉の気持ちを


分かっててわざと来たということになる。






「…じゃあもしかして、廉が桜さんを

まだ引きずってると思ったからですか？」



桜「でも来てみたら桜の木はなくて。

私の勝手な思い込みでしたね」





下を向いて微笑む桜さんは

あまりにも切なく遠い目をしていた





「そんなことないですよ」





だから、気づけばこんなことを言っていた





桜「え？」





「だって最近までずっと廉、

桜さんとの約束守ってたから。笑っちゃうくらい」






なんで私、永遠のライバルにこんなこと

言ってるんだろ。





「ロック画面がずっと桜さんだったし

２ショットも他の人と撮ろうとしなかったし」





きっとそれは、当時桜さんが

廉を想っていた気持ちは

私も廉を想う気持ちと同じだって

分かってるから





桜「…あの人と向き合うと自分がどれだけ

薄情な人間か思い知らされますね」




桜「たくさんの愛情や幸せをもらったのに

私は何も返せなかった。

今でもたまに思うんです。

ここに残ってたらどうなってたのかなって」






深くは聞かなかったけど

桜さんはきっと廉に対して

この街に対して、後ろめたい気持ちが

在るんだなと感じた

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