春の線香花火 ２

77. 永瀬廉side ページ27

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永瀬廉side





顕嵐はそのまま、東京へ帰った。




俺は一人残されたまま、顕嵐の言葉が

何度も何度も頭を巡って




当時の泥臭く汗臭く

でも間違いなく輝いていた日々が

何度も何度も思い出された




・

・

・





ーPrince BAR





永瀬「…俺やっぱ逃げたんよな」



神宮寺「え？」



永瀬「東京に残らないでこっち帰ってきて。

またいつでも東京に戻れたのに。

やっぱり逃げたんやわ、アイドルって職から」






毎日レッスンして、必死に努力して

がむしゃらだったあの日々。




本当に数えれるくらいだけどファンだと

言ってくれる人もいた




でも芸能界は決して甘くなく

人気の有無は嫌でも歓声や出待ちで

露骨にわかって




時には自分自身のプライドがズタズタにされた




そして先輩が後輩に抜かされたりしてるのを

目の当たりにしている中で日に日に

俺の中には恐怖心が生まれた




もしこのまま何年やっても人気が出なくて

顕嵐とかだけが売れていって

無職になったらどうしよう




売れる人なんてほんの一握りだ




それならば、そんな思いをする前に

この世界から身を引いてしまおうと





それでもカメラマンになったのは

きっと俺の中でまだ、あのレンズを向けられる時の

高揚感やトキメキを忘れられなかったからだと思う







神宮寺「まだ逃げたって結論を出すのは早いよ」





神宮寺「しかもあの売れっ子アイドル

廉に会うためにわざわざ来たかのように見えたな。

だとしたら、なんだろな」







顕嵐は、俺にわざわざ会いに来て

もう一度あの世界に連れ戻そうと

してくれたに違いない

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