切れる時 ページ31
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「……かあ、さん…………?」
腹の上の母の頭を抱えると、
生暖かい感触。
手を離すと、赤く濡れた手のひら。
床の上を赤い液体が流れていく。
「母さん?…ねえ、母さん
母さんっ……!
起きろよっ、母さん何やってんだよ!
なあって!
母さん……っ、」
濡れた床の上を母の手が這っている。
私はその手を強く握る。
まだ生きてる。
その温みを感じたのも束の間。
ふっと母の手の力が抜けて、
また動かなくなる。
「母さん…?」
じわじわと、母が冷たくなるのを感じる。
やめて...
頼むから、
この温みで。
私の手の温みで、私のこの脈で
どうか母を生かして。
まだ……
「おいっ!お前ら、さっさと始末しろ!」
その声が聞こえて、
私は思わず顔を上げる。
男が、周りに駆けつけた手下に命令して
その手下たちが私たちの元に来て
母を抱えあげる。
「…やめろっ、」
持ち上げられる母の手を強く握るが、
振りほどかれ
まるで人形の片付けでもするような手つきで
母を運ぶ。
_____ ブチッ、
その光景の中で、
何かが切れる音がした。
「……うわあああああああああっ!!!!!」
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有希。(プロフ) - ピエロさん» ありがとうございます!初コメント頂いて感激です。頑張ります! (2017年1月1日 16時) (レス) id: 26851cf6e5 (このIDを非表示/違反報告)
ピエロ - 今日はじめてみました。更新待ってます (2016年12月31日 17時) (レス) id: cb976b3c25 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:有希。 | 作成日時:2016年12月19日 19時