辞める理由 ページ16
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少し口答えをしたすばるさんは、
灰皿にタバコを押し付けて
コップに残っている酒を一気に煽ると
席を立ち、適当なお金を置いて
店を出ようとする。
別に怒ったわけではなくて、
気まぐれな性格の彼らしい行動なので
ヨコも私も動じることなく対応する。
ヨコはレジに金を突っ込み、
私はすばるさんの背中を追いかけて
喫茶店を後にした。
「ん。」
「…ありがとうございます」
お酒を飲んでも二、三杯では酔わない彼は
助手席のドアを開けて私に座るように促した。
私が乗ったのを確認すると、
すばるさんも運転席に乗り込んで
当たり前のように車を発車させる。
「なんで、そない学校辞めたいんや。」
いつも通りすばるさんの車の中を流れる
古い洋楽に耳を傾けていると、
いきなりすばるさんが私に話しかける。
珍しいことに、反応がワンテンポ遅れつつも、
私は口を開いた。
「…私みたいなのがいると大人は煙たいんです。
ヤクザっぽい家の子だから
キレたら何するかわからないって
噂されてるところたまたま聞いて…」
そういう子がいると、他の生徒の不安を煽る。
そう言う大人達の視線を察する能力は
幼い頃から板についていた。
「義務教育終わってまで、
そういう目で見られるの癪なんで辞めます。」
「ん、そか。」
私が話終えると、
尋ねておいて頷くだけの反応を見せて
それ以上は何も尋ねることもなく、
すばるさんは徐ろに車を走らせ続けた。
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有希。(プロフ) - ピエロさん» ありがとうございます!初コメント頂いて感激です。頑張ります! (2017年1月1日 16時) (レス) id: 26851cf6e5 (このIDを非表示/違反報告)
ピエロ - 今日はじめてみました。更新待ってます (2016年12月31日 17時) (レス) id: cb976b3c25 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:有希。 | 作成日時:2016年12月19日 19時