信愛 ページ11
『故に、ゆえによ、順平くん。』
ゆらりと此方へよる名前はそっと順平に耳打ちした。
『負の感情こそ我らが本性。隠したってそれが形にならなくったってそれは変わらないの。』
アイツを殺したい。アイツに酷い目にあって欲しい。
復讐したい。
『突き詰めるところどんな善人も悪人もそうしたいからそうしているだけなの。それが周りにとって都合がいいか悪いかそれだけなの。
だから君も、アンタも』
いつのまにやら彼女に押し倒されていた。
彼女は美しい。ほんとに美しい人だ。自分をあんな目に合わせた連中の連れの女とは違う。
アタシはは常に肯定する。いろんな欲望を受け入れる。だから呪霊さえ拒みはしない。それを生み出す非術師も肯定する。
アタシは全てに平等だ。アイツとは違う。
代わりにアタシを否定するものを全力で殺す。肯定しながら殺す。
アタシを愛さない奴なんて死ねばいい。その代わりアタシは全てを愛すから、殺す代わりに愛すから。
『私は君の全てを肯定するよ。だから君もあたしを肯定して?
あたしはキミを愛してあげる。だからあんたもあたしの愛を肯定して?
アンタもアタシを愛しなさい。アタシもアンタを愛すから。』
僕のファーストキスは愛に満ちていた。それは神聖な、信徒への慈愛だった。恋じゃなかった。
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作者名:かむかむ | 作成日時:2021年5月6日 23時