今日、君を拾った (ページ8)

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君を拾った8 ページ8

1週間この猫と過ごしていて、私はこの猫の頭の良さを実感していた。
私が言ったことを理解するのはもちろん、文字も理解しているような素振りをするのだ。現に今も私がもらってきたビラを読んでいる。
私はこのビラを読むのに妖精さんに読み上げてもらってようやくわかるというのに……いいんだ、私にはこの世界の言語と文化を知る妖精さんが自動翻訳してくれるから……

「…」

ビラを睨みつけてバッタンバッタンとしっぽを机に叩きつける猫。私のような猫初心者でもわかる、これ不機嫌になったな。
ビラになにか気に食わないことでもあったのだろうか。

猫はじっとビラを睨みつけていたが、不意にすん、と視線をずらして私の近くに寄ってきた。もうビラはいいみたいだ。
猫は私の手をグリグリとおでこで押す。構い給えと言いたいみたいだ。私は御要望通りに猫の首を掻いてやる。そうすると猫は上機嫌にゴロゴロと喉を鳴らした。

『あら、あら、なんともまあ怪しいこと！』

「フラメ…」

『んふ、かわいい、かわいい、私たちの愛し子？悪いことは言わないわ。その子猫のことを思うならこのビラの主は信じない方がいいわ』

「このビラを配った人を知ってるの？」

『ええ、ええ！人間には分からぬようにしているようだけど…私たち(妖精)の目は誤魔化せないわ！そのビラを配らせたのは件のI国の王様よ』

「……ビラにはそう書いてないみたいだけど、」

私がそう言うと声の主…この家に住み着いているフラメと名乗った火の妖精は笑った。
む、……なんだよ…

『だから言ったわ！人間には分からぬようにしているとね。A、A、私たちの可愛い愛し子。貴女が気付いているように、私たちは子猫も愛しているの。私のような火の妖精は特にね』

「…うん」

『だから私は子猫の為に助言してあげるわ。もちろん、貴女の為にもね。…そのビラは捨てなさい。そして、子猫を拾ったことを誰にもバレないようになさい。特に、I国に関連する者たちには絶対に』

声しか分からない妖精はそう言ったきり、喋らなくなった。
『I国に関連する者たちには猫の存在が絶対にバレないようにする』
妖精たちはいつも私を助けてくれるけど、いつも答えを言わない。たぶん、私のためではあるのだろうけど……とりあえず、猫のことは誰にもバレないようにしなくてはいけない。その方がきっといいんだろう。
私はビラを小さく折って、部屋のゴミ箱に捨てた。