今日、君を拾った (ページ5)

今日:5 hit、昨日:2 hit、合計:7,504 hit

君を拾った5 ページ5

雨が降っているから分かりにくいけど、もう夜だ。適当になにか食べてもう寝よう。あぁ、その前に。猫の下に敷いてある布を変えよう。私の羽織もまだそこにあるのだ。

「君、こっちへおいで」

「……」

「布を変えたいんだ。それは血で汚れているし、雨に濡れているから」

猫は私の言葉を理解したのか、じっと見上げた後に静かに布の上からどいた。私は汚れた布たちを退かして、新しい布を敷く。大きめのタオル何枚かで簡易的な猫ベッドを作る。
ペラ、と布を捲れば猫はそこに体をねじ込ませるように入っていった。布を元に戻せば掛け布団になる。これでよし。

汚れた布は早めに洗わないといけない。風呂場で洗おう。…私の羽織、白なんだけど…落ちるかな……

「……すごい落ちたな…ヴァッサスからもらった水だから…？」

妖精の加護って洗濯にピッタリなんだなあ。一家に1人妖精さんじゃん。
洗濯を終えて室内に干す。こうやって室内干ししてたら湿気でカビとか生えそうだけど生えたことは無い。たぶん、ヴィンデスが乾かしてくれているのだろう。

洗濯を終えたらもう、私が今日することはなくなった。本とか読めれば暇を潰せるのだけど…生憎、私にこの世界の文字など読めない。精々が話せるくらいだ。

突然ではあるが、私について話をしよう。
『私』は令和を生きる普通の女子大生だった。スマートフォンを持って、パソコンでレポートを書く、普通の女子大生だ。
それがなんの因果か、『私』は突如として異世界転生を果たしていた。どうしてなのかは未だわかっていない。
そこは置いておいて、兎も角、『私』は『私』としてこの世界に生まれ変わりを果たしたのだ。

この世界の『私』は親戚一族に酷く嫌われていたみたいだった。原因はこの白い髪と白い目。白い目というより白いビー玉みたいな目なのだが、遠くから見たらどう考えてもホラー映像である。私も自分で鏡を見た時「恐」と言ってしまった。
加えて、私の耳は妖精の声が聞けたのだ。
見た目だけだったら適当にどっかの物見屋に売られたりしたんだろうけど、妖精の声が聞こえることで親戚含めた村の人達は妖精の報復を恐れた。
なんでも、妖精の声が聞けるのは妖精に愛された人だけらしく、神話にも妖精の話が出てくる度に書かれることみたいらしい。
つまるところ、見た目怖いから適当に処理したかったが妖精の報復を恐れてできずに、結果として遠くの山に小屋立ててそこで生活させるということになったのだ。