今日、君を拾った (ページ25)

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君を拾った25 ページ25

「ここは……？」

ようやく海が見えてきた。海というか、崖なんだけど。私がマリィから借り受けた『海』の権能で安全かつ超スピードで帰るのだ。1度使えばなんとなくやり方だとかはわかるからね。

崖に連れてこられて困惑しているシュメッターさんには悪いけどなる早で帰りたいので、私は何も言わずにシュメッターさんの腰を強く抱いてそのまま海へ落下した。

「エッ、ちょ、うわぁぁぁ！！」

そんなシュメッターさんの叫び声が聞こえたがすぐに海に吸い込まれていった。
万が一放したりでもしたら私や、私にしがみついている猫はともかくシュメッターさんは海の藻屑になる可能性が高いので密着するような形でシュメッターさんの体を掴む。この人大きいんだよね……いや、私の背が低いのか……

「『海よ、どうか私たちを望む場所へと連れて行ってくれ』」

何を考えずとも口から出てきた言葉は確かに海の中であるのに響いた。
途端、海が生き物のように動き始めた。それは波を作り、流れを作った。速く、そして優しく。海は私たちを包み込んでそのまま私の拠点があるT国へと運んで行く。

再び姿を現した月の光が差し込む幻想的な景色をシュメッターさんはハクハクと口を開け閉めしながら眺めている。普段は見れない景色の衝撃からかだいぶ意識がはっきりしてきたような気がする。

海を流れ、そのまま魚たちと共に川をのぼり、水の流れを逆流するかのように、私たちはT国の泉近くまで帰ってきていた。
ここから泉までは妖精の道を使えばすぐだ。

『……あら！おかえりなさい！私たちの可愛い可愛い愛し子！』

「うん、ただいま。帰って早々に悪いんだけど、シュメッターさんを泉に入れていい？」

『えぇ、えぇ、構わないわ。とても痛そうだもの…はやく治してあげなくちゃよね』

「え？え？あの、……貴女は…」

『…あら、流石ね私たちの愛し子。あまり見せようと思っていないのに…私の姿が見えるのね。それとも…私の権能に包まれてきたからかしら？』

シュメッターさんはどうやらマリィの姿がくっきり見えているらしい。様子を見るに声も聞こえているみたいだ。
マリィ自身、力の強い精霊だから見える人には見えるらしいけど…海の権能を返した私にはもうマリィの姿は見えない。