今日、君を拾った (ページ23)

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君を拾った23 ページ23

風の妖精のおかげでか…こつん、と音を出すことなく私はシュメッターさんがいるであろう牢屋の前までやってきた。ここは階段の明かりも届かず、とても薄暗い。こんなところにずっと閉じ込められていたのか……

「…みゃおん」

「……ね、こ…？そこに………だれ、ですか？…」

「簡潔に言うと、私は貴方をここから助けにきました。貴方がエーミール・シュメッターさんで間違いないですね？」

目が慣れてきてシュメッターさんの姿が朧気に見えた。ボサボサの髪に、食事もあまり与えられていないのか少し頬が痩せこけている。私の声は聞こえているようだけれど…それもギリギリなのだろう。思考と口が直結しているような感じだ。

『嘘、精霊様……いいえ、私たちの可愛い可愛い愛し子…本当に、エーミールを助けに来てくれたの…？』

「…うん、もう大丈夫だよ。君たちもよく頑張ったね」

『アァ…アァッ！よかったぁ…本当に、……よかったぁ……！』

「……？…あ、の…」

…そうだった、シュメッターさんは別に妖精の声が聞こえるわけではないんだった……何も無い空間に話しかける変な人になっちゃったなあ……まあ、いいか。とりあえずここから脱出しよう。

牢屋を開けようとするが牢屋には鍵がかかっていた。そうじゃん…鍵のこと忘れてた……1回上に戻らなきゃかな、と考えていると猫が鳴いた。
どうした、と思ってちらと私の肩に乗る猫を見ると口に鍵らしきものを咥えていた。やっぱり頭いいなこの子。大方私が入口の軍人さんをずらしている時にでも取ったのだろう。

牢屋を無事に開けて中へと入る。シュメッターさんは手錠をしているわけでもなかった。ただ、やはりだいぶ衰弱していて走るような体力はないだろう。体も、近くで見ると分かったが人に殴られたような形跡がある。切り傷もあるのか血が服に染み込んでいるところもあった。もしかしたら病気にもなっているかもしれない。

とりあえずこの建物から脱出さえすればいい。森の中なら私に声をかけないで見守っているだけの妖精さんたちもたくさんいるだろうから私たちがなにかされることもないだろう。