今日、君を拾った (ページ18)

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君を拾った18 ページ18

『あら…もう行くの？』

「うん、ここからだと幽閉場所は少し遠いから早く行った方がいいでしょ？」

『そうね。人間の時は速いもの…もう、行ってしまうなら私の権能を貸すわ』

「え、ッうわ…！」

ぶわ、と雨に濡れたような、ドボンッと海に潜ったような感覚がした。
思わず閉じてしまった目を開くと私の白髪はマリィと同じ、泉の色をしていた。
マリィは私と目を合わすと満足そうに微笑む。

『んふ、…いい色。渾身の出来だわぁ！』

「これは…マリィの権能？」

『えぇ、私は今こうやって泉に住んでいるけれど…元は海に住む水の妖精。私の権能は『海』よ。私の権能を借り持つ今の貴女なら、海を歩いて渡れるわ！』

「え、すごいショートカットだ」

『ふふん、そうよ。今の貴女には一番必要でしょう？I国からこちらまでの妖精の道は作っていないもの…暫くは私の権能を使って海を歩くのをオススメするわ』

「ありがとう、マリィ」

『どういたしまして、ね！』

にこにこ、と笑う彼女は確かに綺麗だった。顔も小さくて整っているし、白いワンピースのような服で包まれた体の曲線もとても美しかった。
マリィってこんな姿をしてたんだなあ…予想通りではある。

猫を地面に置いて私は背負っていたリュックから最低限のものを中に残すように、中身を外へ出していく。あまり多すぎても目立つから。
外へ出したものはタオルでくるんでおいた。中身を減らしたリュックは随分軽かった。これなら移動もしやすいだろう。

『あら、子猫はここへ置いていくのかしら』

「うん、危ないから…」

『…子猫は違うようだけど？』

「にゃう、にゃーん！」

足元ではぬくぬくと温まっていたタオルから抜け出していた。えぇ、…でも、荷物を出す時にエプロンもついでに外したのだ。猫は置いていくつもりだったから…

猫としても仲間が心配なのはわかるけど…怪我は泉で治したとはいえ、治ったばかりであまり激しい運動はさせない方がいいだろうし………

私と猫が見つめ合う時間が流れる。
猫はまっすぐ私を見つめていた。うーん………仕方ない。
私は猫をひょいと持ち上げて顔を隠すためのフードの中、私の肩の上に乗せる。
猫は少し驚いた様子だったがすぐに私の首裏を陣取り、しっぽと顔を少し外へ出した。すごいもふもふする。

「君、ここで大丈夫？」

「にゃーう」

いい返事だ。