今日、君を拾った (ページ15)

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君を拾った15 ページ15

私はそっと、ポケットの中の猫を見る。
猫の顔からはなにを考えているのかよくわからなかった。よくわからなかったけれど、少し寂しそうな、なにか思い詰めるような、そんな感情を感じた。
私はそっと、ゆっくりと猫を撫でる。猫はちら、と此方を見て、それから受け入れるように目をゆっくり閉じた。

「……探すよ｣

「……みゃぁ、」

「この子は元の場所に返す｣

『…本当に大変なのよ、』

「それでも｣

『嗚呼……そう、…決めたのね』

「うん」

『可愛い愛し子。ならば私たちは貴女に協力しましょう。貴女に力を貸しましょう。貴女の助けとなりましょう。それが例え、長い旅路になるとしても…私たちはずっと変わらず貴女の味方となり、貴女の傍にいましょう』

「…ありがとう、マリィ」

『いいのよ、可愛い愛し子』

する、と頬に冷たい感触がした。ユガールの権能は泉に到着した辺りできれてしまったからか、私にマリィの姿は見えなかった。それでも、この頬を撫でているのはきっとマリィなのだろう。
撫でられる感触がなくなって、猫の鳴き声に誘われてポケットを見る。

「…どうしたの？」

「みゃあ」

「……大丈夫だよ、絶対に返してあげるから」

「うにゃん、」

「…賢い子。君が申し訳なく思う必要はないとも。君はただ猫らしく、人を利用してればいい」

「…にゃーお」

頭を撫でて、耳の裏を掻く。目を閉じてゴロゴロと音を鳴らして心地良さそうにしている。猫はこうでなくちゃな。

『…さあっ！そうと決まれば作戦会議よ。…っと、その前に、子猫は泉へ入れるべきね』

「……なんで？」

『あら、だってまだ怪我は完全に治っていないでしょう？泉に入れば治るはずよ。呪いとかは…まあ、少し無理だけど』

「怪我…そうだね。まだ治っていない筈だし……君、入れる？」

「……にゃうん」

『すごい嫌そうね』

この子は賢いから自分の為だとわかっているんだろうけど…やっぱり水は苦手らしい。
ポケットから猫を持ち上げて、そっと、泉の中へ入れる。
パシャパシャと水を手でかけていると猫を中心に泉が輝いた。
マリィが言うにはこれでもう大丈夫らしい。
猫はその声を聞いてすぐに私の体にしがみつくように水から逃げた。頑張った、頑張った。偉い、偉い。
私は猫を労うように厚手のタオルで体を拭いた。