69.二人 ページ29
少女にはかつて、母が父である一期一振に抱いた感情が、理解出来なかった。
でも、今ならわかる。
私を離さないで欲しい、愛して欲しい。
そう思ってしまうのが、「恋をする」ということなのだろう。
清光は少女の答えに、ぽかんとして目を見開いた。
加『……それって、オーケーって事?』
「……そうだよ?」
加『え、だって...主、嫌じゃないの?
俺、加州清光なんだよ?
謀反してきた奴と同じ姿の奴と付き合うなんて、』
「そう思ってるなら、もっと昔に清くんのこと突き放してるよ。
清くんは、清くん。
私の...加州清光。」
加『…………っ!
もう、何だよ……そんな事なら、もっと前に言っときゃよかった...。』
玉砕覚悟だったのに、と加州は過去の踏ん切りをつけられなかった自分を詰った。
十年もあったのに、今思えば隣にいた時間が凄く少なく感じる。
でもこれからは、いつでも隣に寄り添っていよう。
清光は、少女の手を取って、改めて向き直った。
加『...主、これからもよろしくね。』
「……こちらこそ。
これからもよろしく……私の大切な、『加州清光』。」
お互い、頬が薄らと紅に染まる。
想いが通じ合うというのは、こんなにも幸せなのかと、少女は握られた手から伝わる温もりで、恍惚とした。
そしてそれは清光も同じで、気づけば二人の顔は、どちらともなく近付いていて。
唇が触れ合う、その刹那……−−
鶴「主ー!加州ー!生きてるかー!?」
加『−−−!?』
ババーン!という効果音がつくのではないかという勢いで、鶴丸が手入れ部屋の襖を勢い良く開け放った。
先程までいい雰囲気だった二人は、一転して飛び上がってお互いを突き飛ばしてしまい、畳に強かに体を打ち付けた。
鶴「手伝い札使って済ませて来ると言ってた癖に、随分と遅いじゃないか。
皆加州の無事が気がかりで……ん?」
加『な、何だよ鶴丸……。』
尻餅をついて軽く悶絶する清光と少女を見て、鶴丸はニヤリとほくそ笑んだ。
鶴「……ほほーう、なるほどなあ。
いやあ〜ようやくくっ付いたか!」
加『はあ!?』
鶴「いやはや全く、やきもきさせてくれたぜ。
さてと、俺は光坊に赤飯の用意を打診してくるかな!」
「ちょ、ちょっと鶴丸さん!?」
お幸せにな〜と手を振り立ち去る鶴丸に、二人は呆然として、しかしすぐにどちらともなく声を出して笑いあった。
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なつき - コメント失礼します。本当に面白かったです!過去に謀反を起こしてしまったけど最後まで主を守ろうとした加州、かっこよかったと思います!そして清光。主の事を思っていたからこそ距離を置いていたという所にキュンとしました!これからも頑張ってください!!! (2019年3月29日 21時) (レス) id: 096c0293d8 (このIDを非表示/違反報告)
… - いい作品でした… (2019年3月26日 6時) (携帯から) (レス) id: 46e1741f78 (このIDを非表示/違反報告)
まりえもん。(プロフ) - 胸が苦しいです...、最後に清光くんの健気な主を守りたいという気持ちが本当に泣けます...素晴らしい作品を作者様、ありがとうございました (2018年12月9日 9時) (レス) id: 327421a364 (このIDを非表示/違反報告)
湖@清光可愛い鯰尾君可愛い亀ちゃん大好き!!! - そして最後もう一振りの清光…くっついて良かったです!やっと付き合えたね!おめでとう!!!って感じです。凄く良かったです! (2018年1月16日 0時) (レス) id: 073b3b6cdc (このIDを非表示/違反報告)
湖@清光可愛い鯰尾君可愛い亀ちゃん大好き!!! - 面白過ぎです!滅茶苦茶感動しました!泣きました…。これからも頑張って下さい!応援して居ます!この作品…大好きです…!清光が折れた時、いくらだめな事をしていても何で折れちゃったの!?って泣きました。 (2018年1月16日 0時) (レス) id: 073b3b6cdc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:弓月 | 作成日時:2017年12月3日 1時