24. ページ24
.
「キヨ」を知ってからというもの、暇な時間はYouTubeを開くようになり、言ってしまえば「キヨ」にいつでも会えるようになってしまったわけだ。けれど、やっぱりバイトに行って「清川さん来るかな？」と考えるのは、それとはまた別物だった。
深夜のバイト。「お疲れ様でーす」と山本がやってきた。山本と会うのは、あのクリスマスの日以来だった。
「あけましておめでとう」
「うっす」
山本は、なんだか得意げに「見てくださいコレ」とポケットからメモ帳を取り出して私に見せる。そこには、コピーされたタバコのパッケージと、正式名称、略した呼び方等が不器用なりに整理されていた。山本は「これで、もうタバコ関連でやらかすことないっす」とドヤ顔をした。
「どうしたの、テキトーにこなす男なのに」
「やる時はやる男なんですよ」
「なにそれ」
彼の言葉に笑いつつ、「じゃあ、後よろしくね」と山本にシフトを引き継いで、バックヤードへと向かう。パソコンに向き合っていた店長が「おつかれ佐藤さん」と軽く顔を上げて笑った。
「佐藤さん、ちょっと相談なんだけどさ」
「なんですか？」
「佐藤さん、いつも深夜帯に入ってくれてるじゃない？」
「はい。時給いいですし、ありがたいです」
「こっちもありがたいんだけどさ」
店長はそこまで言うと、「ここのところ、この近辺不審者多いじゃない」と言いづらそうに続けた。
「女の子のバイト帰りって危ないと思うし、そこまでこっちも責任取れないというか……。家族が迎えに来てくれるならいいんだけど、佐藤さん一人暮らしでしょ」
「……」
店長の言わんとするところをなんとなく察する。深夜帯は、男の人や迎えのある女性に任せたいということなんだろう。私は思わずくちごもる。心配してくださるのはとても有難いけれど、私はこの生活で何とか食いつなぎつつ貯金もしているところがあるし、深夜帯はやっぱり欠かしたくない。
「……少し、考えさせてくれませんか」
「うん。また意見があれば教えて」
店長にそれだけ言うと、私は制服から着替えてコートを着込み、外へ出る。丸い月が浮かぶ空はもう真っ暗で「どうしようかな……」と呟いた言葉は空へと消えていく、と、思いきや、届いた相手がいたらしい。
「どうしたんですか」
ちょうど買い物を終えたらしい清川さんが、私の顔をきょとんと見て立っていた。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1074人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「実況者」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
parumu(プロフ) - かえる。さん» はじめまして！ありがとうございます(；＿；)♡これからも宜しくお願いします〜！！ (2022年8月28日 21時) (
レス) @page38 id: 3fe3b17a70 (このIDを非表示/違反報告)
かえる。(プロフ) - 初コメ失礼します!いつも楽しく読ませてもらっています！応援してます！ (2022年8月28日 21時) (レス) id: 06d9623eb5 (このIDを非表示/違反報告)
parumu(プロフ) - いぬU・x・Uさん» はじめまして！そんなふうに言っていただけて嬉しいです(；；)まだ何も起きていない平和なお話なのですが、楽しく読んでいただけると嬉しいです！ぼちぼち頑張ります〜！ (2022年8月28日 21時) (レス) id: 3fe3b17a70 (このIDを非表示/違反報告)
いぬU・x・U(プロフ) - 初コメ失礼します…！とっても素敵なお話をありがとうございます！！これからも主さんのペースで更新応援しております〜！！ (2022年8月27日 13時) (レス) @page37 id: b1951e364b (このIDを非表示/違反報告)
parumu(プロフ) - リーフィア推しの【タクト】さん» そうなのです、読んでいただきありがとうございます🥰 (2022年5月24日 20時) (レス) @page29 id: 3fe3b17a70 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：parumu | 作者ホームページ：https://mobile.twitter.com/parumu_u_62
作成日時：2022年4月23日 16時
