side:K『パクスロマーナの終わる時』 ページ10
「ねぇねぇ、起きてぇー?」
間延びした声と裏腹に、確実な一撃を入れてくる誰かがいる。
(誰だ?)
目を擦りながら起き上がると、目の前には小柄な美人がいた。思わず後退ってしまうと、その人は腹を抱えて笑う。
「案外早く起きたねぇ、お兄ぃさん。ボクはねぇ、ロマーナ・パルクスってゆーんだぁ。」
目尻を指で拭いながら、謎の美人は自己紹介をする。何かそんなに面白いのか分からないが彼…いや、彼女?はまだケタケタ笑っていた。
ようやく笑いが治まったらしいそいつは、何故かこちらをじっと見てくる。何かを催促するような目だが、俺は何も持っていない。
首を傾げる俺にしびれを切らしたそいつは、
「お兄ぃさんの番だよっ!早くな・ま・え!」
と喚き散らす。
(情緒不安定か?!)
高い声に耳がキンキンするのを我慢しながら、俺は名乗る。
「俺は片切一葉、25歳、左官。」
「へぇ、一葉にぃは左官なんだぁー。」
(いきなり下の名前…関わりたくねぇ。)
妙に馴れ馴れしい話し方に、俺は思わず顔をしかめる。
するといきなり奴は立ち上がって、ブツブツと独り言を言い始めた。黒に紫のインナーカラーの髪を弄りながら、何か考えている。
(本当に何なんだこのチビ。)
初めて見るタイプの人間に俺は戸惑っていたが、このままだと何も出来ない。
「おい、おま…パルクス、ここは何処だ。」
出来る事なら目を合わせたくもなかったが、この空間で話し相手はこいつしかいない。
仕方なく俺は話しかけた。
「あぁ、そうだったぁー!ちゃんと説明しなきゃだよねぇ、ロマーナってばうっかり☆」
そう言うと奴は何もない場所を手のひらで押す。
するとまるでドアがあったかの様にそこだけが別の景色を見せる。
「一葉にぃ、ロマーナと一緒に、こっちに来てくれるよねぇ?一人で行くのは寂しいよぉ。」
目の前で起きた事と奴の言動に違和感を覚えるが、言われるがまま、俺は向こうへ足を踏み入れた。
「こちらロマーナ。片切一葉、俺の方で無事回収した。どうぞ。」
『こちら点C。これより神界の門の施錠を開始します。どうぞ。』
続く
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作者名:酔風 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/lovernish-now/
作成日時:2021年5月30日 21時