風神と雷神 ページ9
僕の問いに、二人は頷く。
「汚れで一杯になってしまったら、神界で浄化するしかない。でもそしたら、100年のカウントはゼロに戻っちゃって…。」
二対になる者はお互いに出会えなければ適正値が高かろうと、勧誘する事はできない。
それがこの事業の落とし穴なのだと悟る。
この世界で生きるようになった数週間で、僕は神界を好きになった。
その分、力の及ばない部分に歯痒さを感じ、握った手に力が入る。
「でもそれだけじゃ無くて…。」
ユラさんはそこまで言うと、口を噤んでしまった。何故そこまで躊躇うんだろう?
数分後、意を決したように彼女は恐る恐る口を開く。そこからでた言葉は
「サキさんは、実は…彼と対になっていたんです。」
容易には信じられないものだった。
僕とネヴィが呆然としていると、後からつけたすように、慌てて彼女は話し出す。
「あっ、でも大丈夫です!神界には転生の手続きで来ることになるので、その時にサキさんに浄化して貰えればカウントはリセットされませんから!」
「…と言う事は、一度人事ではなく転生面接官になる必要がありますね。能力としては申し分ないと思いますが。」
ネヴィは口元に手を添えて、これからの事を簡潔に伝えてくれる。
一度言葉を止めた彼が何を聞いてくるのかは、もう分かっていた。
僕は二人の手に自分の手を添えて、明言する。
「僕が出来る事が彼や皆の助けになるなら、僕はやりたい。」
この思いは、たとえ誰か相手でも覆らない、僕の信念だから。
そう言ってニィッと笑うと、二人は安心したような顔をする。
そして僕の真似をして、ニィッと笑った。
「ちょっと、なんで真似するのよピンク頭!」
そして、いつも通り二人は喧嘩を始める。
この他愛ない日常が続くのが、僕は大好きだ。
続く
side:K『パクスロマーナの終わる時』→←イザナギとイザナミ
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:酔風 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/lovernish-now/
作成日時:2021年5月30日 21時