べっこう飴と蝙蝠。 ページ7
宙を揺蕩うガラス片の目の前で、ユーフラテスさんが話し出した。
「これが神力ガチャです。一人につき一度しか引くことは出来ないので慎重に選んで…」彼女の話も聞かずに、僕は強く惹かれた破片へと手を伸ばしていた。琥珀色のそれに触れると、何かが体に流れ込んでくるのを感じる。
「あー…また直感で…それは雷神の破片です。」
「雷、神。」何故か、その名が馴染み深いもののように感じた。
体に染み込んだ何かが鼓動を速める。その懐かしい感覚は、何て名前だっけ。
「あの、コレってどうやって上るんですか?」途中で途切れた雲を見ながら、僕はそう言った。
床から6メートルほど離れたところに雲はあり、梯子でも使わない限り届かない。
「え、飛ぶんですよ。ガチャを引けば大抵は空を飛べるようになりますし、身体能力は強化されてますので安全に雲を歩けるはずです!」ユーフラテスさんはそう話した。
空を飛んだ事なんて無いのに、さも当然のように言われてはやり方が聞きにくい。
僕が考え込んでいると肩に手が添えられ、振り向くとネヴィがいた。
ネヴィは少し屈んで耳元に顔をよせると、
「肩を開いて、閉じて、背中に力を入れたらもう一度開いてみて下さい。」と小声で教えてくれる。
耳元で話されると擽ったくて背中がゾクッと震えた。
(誰にでもやってたら絶対ネヴィは隠れチャラ男だ!)
そんな事を考えながら、早速言われた通りにしてみる。
すると背中に何かがあるような感覚を覚え、それを外に出すようなイメージで肩を開いてみた。
その時バサリと何かが風を受ける音がし、思わず背中に手を伸ばす。
「はねが、ついてる…?!」鳥のものとは違うゴツゴツとした手触りから、蝙蝠やドラゴンの翼と同じ形状なのだと思う。
「無事に翼が出せましたね、あとは飛ぶだけですよ。」ニコニコと微笑むネヴィの背中には、かなり大き目の白い翼がついていた。言葉にするなら、天使のイラストで検索したら真っ先に出てくる、抱き寄せた相手を隠せるタイプのやつ。鳥の生態にはさして詳しくないから、上手く言えない。
「厨二感溢れてて良い…。」なんとかそう言った時、微かにネヴィの表情が歪んだ気がした。
厨二感溢れてる、は良くなかった。嫌な気分にさせてしまったかも知れない。
少しだけ罪悪感を抱いたまま、今日はお開きになった。
明日からは衣食住を整える期間が貰えるのだそう。
(準備できたら謝りたいな。)
続く
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作者名:酔風 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/lovernish-now/
作成日時:2021年5月30日 21時