疾風迅雷って格好良いよね。 ページ5
3メートルはあるであろう両開きのドアの模様に、ユーフラテスさんが触れる。
するとあの重そうなドアが、自動で開いた。
ユーフラテスさんとネヴィがお辞儀をしたので、僕もそれに倣って頭を下げる。
(神社の鳥居みたいなものなのかな。)
「では、行きましょう。足場が不安定ですので、危ない時はそこのピンク色を使って安全を確保してください。」振り返ってそう言われ、周囲を見渡すが、手すりや棚は見えない。
唯一ピンク色のものと言えば…ネヴィの髪???
「相変わらず人使いの荒い…。掴まる時は、出来れば髪以外でお願いします。」
「いくら危なくても髪掴んだりしないよ?!」
いつもの事のように言うネヴィに驚く。
それと同時に、ユーフラテスさんとネヴィは犬猿の仲なのだろうと悟った。
気を取り直し部屋に足を踏み入れると、綿のような弾力のある触感がして、思わず足場を二度見した。
黄昏時の雲のような見た目通り柔らかく、非常に重心がブレやすい。
(どうりで危ないと言われるわけだ。)
なかなか次の一歩を踏み出せずにいると、ネヴィが手を差し伸べてくれた。
素直に手を重ねると抱き寄せられ、混乱する。
「すみません、少し暑苦しいですが直ぐ済みますので。」申し訳無さそうにそう言うと、ネヴィは強く足場を蹴り、飛んだ。
「ぬぁぁぁぁぁああああああっっ!?!!」
とんでもない速度で底へと落ちていく僕ら。
「落ちる!死ぬ!誰か助けてぇぇぇえええ!」
ただそう叫ぶ僕の声が、上から下へ伸びるように消えていった。
着地はとても優しかった。下から巻き上がる風に乗って、アリスのようにゆったりと降りることが出来た。だが、もう二度と紐無しスカイダイビングをしたくはない。
「すみません、飛び降りた方が早かったので。」
結局最後は飛び降りる必要があったというから、最善を尽くしてくれたのは分かる。
仕方なかったならいいよ、と言うと僕はユーフラテスさんの方を見る。
そこには、三角形をした色とりどりの硝子片が、キラキラと宙を舞っていた。
続く
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作者名:酔風 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/lovernish-now/
作成日時:2021年5月30日 21時