Spy on the Mad Country. [ヒ.ジ.キ]

【調査書14枚目】 ページ14

「私はA。ディフェル共和国から来たただの移住国民です。」

それだけ言って黙ると、キヨが切れ出した。

「だーかーらー！そのディフェル共和国でのお前のことを聞いてんの！

ふざけんな！！」

「キヨ落ち着けってw
Aさん、さすがにこれ以上キヨをからかうのはちょっと…」

「……ディフェルでは、ただの国民でした。」

すると、ヒラが聞いてくる。

「じゃあ、なんでヒジキ王国に来たの？」

もちろん、「あなたたちの偵察です」なんて言ったらこの場で殺される。

別の目的もあるし、それを言うか…。



「…私の、兄探しのためです。」

「はぁ？お前にーちゃんいんの？」

「はい。でも歳も、姿も覚えがないんです。

母に聞いたら、お前が生まれる前に国を出てったと言われて…。」

うつむいていて話してると、キヨの方から舌打ちが聞こえてきたので、顔を上げる。



すると、ヒラの顔が歪んでいた。

………？も、もしかして？

「………そうなんだ。大変だね。」

ヒラは歪んだ顔をすぐ笑顔に崩した。

私の思い違いだったのだろうか？

そのあと、何事もなく、ただの雑談が始まった。









「なぁ。」

王室を出ようとしたとき、背後のキヨが声をかけてきた。

「なんですか？」

「お前の、さ…兄貴探しの話、してたとき、



……………ヒラ、様子おかしかったよな？」

やっぱりキヨも気付いていたのか。

「私も、そのように見えました。」

「だよな。怪しいな…









……………ヒラがお前の兄貴なのか？」



分からない、とだけ言って、王室をあとにする。

「Aちゃんが俺の妹だったら…俺………」

そう呟くヒラの声を、私は足を引きずる音でかき消した。

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