・ 〜your side 〜 ページ18
間もなく時間になる。
依頼内容に無い追加の家事も済ませて、私はエプロンの紐を解き、被っていたバンダナを取った。
寂しかったが、これがきっと最初で最後になるかもしれない。
一度でも、視聴者だとバレそうになったからには、キヨはきっと警戒することだろう。
テレビを観ているキヨに近寄り、私は『すみません』と声を掛けた。キヨはテレビを消した。
『本日はありがとうございました』
「あぁ、いいえ。こちらこそ、ありがとうございました」
『少し、お料理のストックについて説明したいのですが、よろしいですか?』
「あぁ、はい」
キッチンまで一緒に行き、私は冷蔵庫を開けて説明した、
『タッパーに朝昼晩の3日分を入れています。他4日分は冷凍庫に入っています。料理の中身は蓋にマーカーで書いてありますのでそれで確認してください。それと──』
私は冷蔵庫を閉じ、今度は冷凍庫を開けた。
『お野菜を下処理してありますので、温野菜にして食べてくださいね。ほうれん草のお浸しやその他の副菜も冷蔵庫にガラスの容器に入れてあります。あ、容器は…返して頂かなくて結構です。ご自由にしてください』
会社支給の物なので本来なら返して欲しいところなのだが、そんな億劫なこと、彼にはさせたくなかった。
キヨは私の説明に度々頷きながら聞いてくれていた、
「分かりました。あのお浸しも料理も、最っ高でした!」
『それは、よかったです!』
キヨの言葉が素直に嬉しくなり、思わず笑顔になった。
掃除道具を鞄に詰め直し、私は玄関で靴を履いた。彼は、見送りますと言ってついてきてくれた。
その優しさがとても嬉しかったが、かえって苦しくもあった。
『ご利用ありがとうございました』
キヨに向き直って一礼した。顔を上げるとキヨもペコッと頭を下げた。
『それでは、失礼いたします』
会社の規約上、次回を促す台詞を言わなければならないんだけど、私はあえてしなかった。
キヨは今度は深く一礼して、「ありがとうございました」と言った。
部屋を出て、しばらくマンションの廊下を歩いていると、玄関を施錠する音がこだました。
感じてはいけない寂しさに胸が締め付けられそうになった。
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いと(プロフ) - 美李菜さん» 美李菜様、コメントありがとうございます! キュンキュンしてくれて嬉しいです(?)続き、いつになるかは分かりませんが、折を見て書きたいと思います。最俺部分も書きたいなとは思っていますし、【レウガ】をまだ辞めてはいないのでね(笑)ありがとうございました! (7月30日 8時) (レス) id: 859fd3194a (このIDを非表示/違反報告)
美李菜(プロフ) - 完結おめでとうございます!キュンキュンしました!良かったら続きを書いてください!楽しみにしてます! (7月29日 22時) (レス) @page50 id: 837e5cee0f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:いと | 作成日時:2023年6月8日 10時