原石の姫と雪男たち (ページ39)

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渡辺

なんとなく行かないといけない気がして

Aの家に行くとたまたま出て来た人と入れ違いでオートロックを通れた。

部屋まで行くと鍵がかかってなかったから

中に入るとソファにうずくまる明らかに不機嫌なA

仕事で嫌なことあったのかなぁなんて呑気に考えてると机の上には

薬を入れる紙の袋がクシャクシャに丸められて置かれてた

なんとなく察してコンビニに行く。

自分では言わないけどかなり症状は重いらしくて薬がないと日常生活に支障が出るレベルだと樹や慎太郎はいってた。

　
薬を飲んでも痛みは治るけど気持ちは不安定なままなことが多いらしくたまに俺にも当たることはある

初めは訳わかんなかったけど、

原因がわかってからはなるべく理解しようとA以外のスノスト全員で一度会議を開いたことがあるくらい。

コンビニで適当に温かい飲み物とかインスタントのスープとかおでんとかを買って戻るとリビングからAの姿はなくなってた。

寝室を覗くと布団に包まる小さい影

渡「A、おでん食う？」

「わた、なべ、」

渡「ん？」

布団から少しだけ顔を出して俺を呼んだから

近づくとグスッと鼻を啜った

電気は消えてて見えないけどたぶん泣いてる。

「ごめん、」

渡「なにが？おでん冷めるから」

頭を雑めに撫でればふふっと笑って起き上がった

なんで泣いてるかなんて俺は知らねーし聞かないけどその距離感がどうも心地いいらしい。

「卵ある？」

渡「当たり前じゃん、牛すじも」

「天才」

渡「お前のことならなんでもわかんの〜」

「ヘヘッ、さすが〜」

なんて言って後ろから抱きついてくる

渡「今日は泊まらせろよ」

「仕方ないなぁ」