130話 ページ7
「もしもし、もしもし あー話せるかな」
あの後秀と別れて家に着いて、賢二郎に電話をかけようと思っていたものの、緊張というか、どう接したらというか、わかんなくて、躊躇ってしまう。
でも、ここで立ち止まってちゃ意味が無いって意気込んで、賢二郎と書かれた画面の通話ボタンを押す。
3ダイヤルくらいした後、懐かしい声が聞こえてきた。
「…もしもし?」
「もしもし、賢二郎 …久しぶりだね」
久しぶりに聞く賢二郎の声は懐かしくて、なんだかくすぐったくて、電子音だから賢二郎の声そのままでないことは知っていたけど、それでも、安心感があった。
「どしたの、急に」
「なんか、前…大会から、話せてなかったから話したいなって
もいっかい、私の気持ちも整理して、伝えたいとことが出来たから、電話したいって、思って」
「いいの?俺、一応Aに告白して振られたような人だし、気まずいんじゃないの?」
私が電話した件に付いての確信をついてくる賢二郎は、なんていうかさすが幼馴染みって感じで、少しだけ緊張がほぐれてきた。
「賢二郎、私ね、賢二郎がああやって気持ちを伝えてくれて、それをないがしろにしたくなくて、繋がりを消したくなくて、曖昧なままで何事も無かったようにしようとしてた
けど、それじゃダメだよね」
「うん」
何も言わずに、ただ、ゆっくりと話を聞いてくれる賢二郎に、甘えてしまいそうになる。
「私ね、賢二郎の気持ちにはやっぱり答えられない
私の中で賢二郎は、家族みたいに大切で、恋愛感情では見たことないし、見れないんだ
でも、わがままだって知ってるけど、私はこれからも、賢二郎と今まで通り、今まで以上に仲良くしたい 都合のいいことだって分かってるけど、だめ
かな」
「お前さ、好きな人の頼みが断れると思ってんの
…俺、諦めきれそうにないよ ずっと
いつから、Aのこと好きだったと思ってるの
いいよ、どんな形であれ、Aの近くにいれるだけでじゅーぶん」
「賢二郎は、ほんと、私にはもったいない幼馴染みだよ…ありがとう、ありがとうね」
「ん…じゃあね、おやすみ」
「おやすみ」
結局甘えちゃダメだのなんだの、自分自身に言いながらも、賢二郎の優しさに溺れてしまっていて。
都合よすぎて自己嫌悪してしまう。
結局私は、根本的な自分の性格のダメなところ、直しきれてないんだよな…。
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作者名:moi | 作成日時:2018年9月28日 22時