134話 ページ11
セミの鳴き声が本格的になってきた。
今日は七夕、快晴だ。
「わ、こんな所に笹の葉飾ってある」
私立だからか生徒会活動が活発なのか、イベント事に結構力を入れているこの青城では、七夕も例外ではなかったようで、笹の葉のそばに短冊が添えてあり、願いを書こう!なんてご丁寧にペンまで用意してくれている。
「ね、ね、Aちゃん書かないの?」
「んー、めぐちゃん書くことある?
1人は寂しいから一緒に飾ろうよ」
うん!なんて元気に返事してくれたあと、私の分まで短冊を取ってはい、と渡してくれる。
願い事、願い事かー。
うん、やっぱこれかな。
「かけたー!
Aちゃんはなんて書いた…ふふ、やっぱり部活のことかー」
「ちょ、覗き見しないでよ」
「んふふー、ても予想してたしー?」
めぐちゃんがそうやって可愛く笑うから、結局私は許してしまう。
…そういえばここ、国見たちの教室のところだっけ…見られちゃうかな…まあいいや。
.
「お、金田一笹の葉あるぞ…お前の方が笹みたいだな」
「いやどういうことだよ
あ、これAさんのじゃん」
金田一がそう言って手に取ったのは薄いピンク色の短冊。
そこにはどこか見慣れた、綺麗な時で願い事が書かれていた。
「こんなこと書くからこそ、Aさんってみんなに愛されてんだろうな」
「まあ、そうだろうね」
視線を廊下の先、Aさんのでない2年の教室を見て、Aさんのことを思い出す。
歳上相応の大人っぽさもあるのに、どこかこうして願い事に思いを馳せるAさんのことを思うと、可愛くて、愛おしくて、たまらなくなる。
あと1年早く生まれてきてこれていたならなあ、なんて叶いもしない願いを白紙の短冊に込めて、自分の教室へと向かう。
『全部倒して頂点に立つ姿がこの目で見られますように 信じてます、みんな』
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作者名:moi | 作成日時:2018年9月28日 22時